LP (Atlantic SD-81120)
Producer: Steve Cropper, Don Covay
「ポニー・タイム」「ザ・フルッグ」「マーシー・マーシー」「シー・ソー」「スキー・スキー」「ヨーヨー」。
彼が作るか関係するかしてきた曲の一例である。
タイトルを見ただけでダンス曲であることがすぐわかるはずだ。
この他にも、80年代にはいち早くラップを取り入れていたドン・コヴェイ。
彼はルーファス・トーマスやシル・ジョンスンに比較しうるかもしれない。
ただ違うとしたら、彼らがブルースをルーツに持ち、そこからダンス・ナンバーを波及させていったのに対し、ドンのルーツはあくまでゴスペルにあるということ。
彼がアトランティックに所属し、ソロモン・バークやウィルスン・ピケットに足並みを揃えるのに何ら支障はなかった。
そんな頃に生まれたのが、アトランティック第2作目の本LPだった。
ピケットに続き、、65年6月にメンフィスのスタックス・スタジオに赴いた彼は、ここでA(1)(6)、B(2)(5)の4曲を吹込む。
中でもA(1)は彼最大のヒット曲となるが、アル・ジャクスンらスタックスのハウス・バンドを従え、ソリッドな音とコヴェイのとぼけた味がうまくかみ合ってこの手の曲としては最高のノリを作り出した。
他の3曲も同タイプのダンス・ナンバーだ。
その他の8曲はすべてニューヨーク録音だが、B(3)(4)のアーリー・ソウルに通じる重厚なバラードもある。
ただし、彼はこの後続々と傑作シングルを発表するので、これをベストLPとするのは苦々しいところもある。
▶Some More from this Artist
コヴェイは38年にサウス・カロライナに生まれその後家族と共にワシントンDCに移ったので、そこが音楽上の拠点ともなった。
デビュー作は何と55年、レインボウズというグループでのもので、一時はマーヴィン・ゲイも在籍していたと言われたことがある。
ただし、ビリー・スチュアートはいたらしい。
その後、、リトル・リチャードに目を付けられたりして、独創的なダンス・ナンバーをソロで吹込む一方で、時にはゴスペル/ブルースっぽいものを歌うなどルーツを垣間見せてきた。
そして、やっとたどり着いたのが、グッドタイマーズとして吹込んだ64年の「マーシー・マーシー」。
ローズマートから出されてヒット。
それらは”Mercy” (Atlantic 8104)にまとめられる。
確かにミック・ジャガーによく似ており(というより彼が似ている)、歌もうまくないが、何か味わいのあるLPだ。
後にバークが吹込むディープ・バラード「ユーア・グッド・フォー・ミー」もあるし。
先にも触れたように、2枚のLPの後、傑作曲が多い。
とても書き切れないので、”It’s In The World” (Atlantic 2494) とソウル・クラン名でバークらと録音した “That’s How It Feels” (同 2530) だけ挙げておく。
68年、彼は何を思ったかバンドをジェファースン・レモン・ブルース・バンドと名付け、”House Of Blue Lights” (Atlantic 8237)、”Different Strokes For Different Folks” (Janus 3038) を出す。
小さい頃、ブラウニー・マギーなどを聞いていたのだと。
企画倒れの前者はともかく、後者はかなりいい。
その後は、73年の “Super Dude I” (Mercury 653)、”Hot Blood” (同 1020)、 “Travelin’ In Heavy Traffic” (Phila. Inter. 33958)、 “Funky Yo Yo” (Versiatile 1123) と続く。
中では金をかけた割に冴えない3枚目以外は良し。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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