ARTHUR CONLEY / Sweet Soul Music
LP (Atco 33-215)
Producer: Otis Redding, Rick Hall
アーサー・コンリーは、オーティス・レディングによって見出されたアトランタ出身のサザン・ソウル・シンガー。
サム・クック・リヴューに参加していたこともあるくらいで、サムの影響も感じられるが、同時にいかにも南部らしい土臭さを持ったシンガーで、このあたりがオーティスの目に止まった理由だろう。
オーティスのレーベル、ジョティスを経てアトコに移り、67年の「スウィート・ソウル・ミュージック」の大ヒットで一躍スターの座についている。
が、70年代に入りサザン・ソウルの斜陽化とともにレコーディングの機会も減り、シンガーとしての実力が衰えないうちに消えていった。
80年代に、リー・ロバーツ名義でオランダで吹込んだライヴ盤が出回ったこともあるが、その後噂も聞かない。
ここに挙げたのは、67年発売のデビュー盤。
やはり彼のアルバムのなかでは最も充実感のあるものと言える。
最高の聴きものはスタックス録音のA(3)(4)、B(2)(5)で、どれも力作揃いで感心してしまう。
ジャンプのA(3)、B(5)は重厚な作りで印象に残るし、スローのA(4)、B(2)でのアーサーの素直な感情表現にも光るものがある。
当時のアーサーがまだ20歳前だったことを考えると、この個性溢れる歌いぶりは驚異としか言い様がない。
また大ヒットしたA(1)ももちろん抜群で、ここでのノリの良さはアーサーならではだ。
これとB(1)(4)は、T.N.T.トリプルやモーゼス・ディラードらがバックを付けたもののようだが、なかなか締まりのあるバッキング・サウンドで、大いに満足できる。
なおA(1)はサム・クックの「ヤー・マン」から取られたものである。
これらの録音は、オーティスによってプロデュースされている。
残るA(2)(5)、B(3)はマスル・ショールズ録音で、リック・ホールの制作である。
もちろん悪くはないものの、ハッキリ言って、先の2種の録音よりは聴き劣りする。
総合して、彼の非凡な才能がきらめいている、優れたサザン・ソウル・アルバムだと思う。
▶Some More from this Artist
- “Shake, Rattle & Roll”
- “Soul Directions”
- “More Sweet Soul”
- 『ワン・モア・スウィート・ソウル・ミュージック』
67年の①はアーサーの2枚目のアルバムで、フェイム・スタジオで録音されている。
ここでは1枚めのような濃密さは求められず、平均的なアルバムになっている。
有名なバラードを取り上げたのも、かえってアーサーの若さが浮き彫りになる結果となっている。
68年の②はオーティスの死後、トム・ダウドによってプロデュースされたアルバムで、アメリカン・スタジオ録音を主体としたものである。
初期に比べリズムが軽くなってしまったのは残念だが、ボビー・ウォマックのサポートもあって、出来は良い。
推薦盤だ。
69年の③はマスル・ショールズとアメリカン・スタジオで録音されたものだが、アーサーのなかで一番出来の悪いアルバムだ。
選曲が悪いのも致命的。
④は70年代のキャプリコーン録音を集めたミニ・アルバムで、スワンプ・ドッグの制作した作品集だ。
ややモダンなサウンドをバックに、アーサーの持ち味が発揮された好盤だ。
転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵
コメント