JAMES CARR / You Got My Mind Messed Up
LP (Goldwax 3001)
Producer: Quinton M. Claunch, Rudolph V. Russell
ジェイムス・カーに関する思い出は尽きない。
今また何度手にしたかわからないこのLPを前にして、様々な思いがよぎる。
がその思いというのは、なつかしむとか感傷的になるという性質のものではない。
趣味で仕事でとここ20数年の間に何度耳にしたことかわからないが、そのたびに浸ってしまって同じ曲を繰り返して聞きながら、前に突き進むように高揚していく自分を感じてきた。
このような気持にさせられるアーティストは、ブルース/ソウルを合わせても数人しかいない。
このアルバムが出されたのが67年。
日本でLP化されたのが77年。
CD化されたのが89年。
とまあ、10年置きくらいに求められた形だが、そのたびごとに〝不滅“の形容をさずかってきた。
特にオリジナルLPとして作られたソウルのLPとしては、これ以上のものはないという気が未だにする。
ヒップホップ世代の若い人たちにそれをすぐ押しつける気はないし、また賛同して下さる方がそう次々と出てくるとも思えないが、まあ南部のメンフィスというところに、こうしたシンガーが居たということだけは心に留めておいてほしい。
▶Some More from this Artist
ジェイムス・カーとは、サザン・ソウルとは、さらにソウル音楽とは、といったことはすべて今あげた1枚目のアルバムで集約されてしまうのだが、普通の意味でいえば “A Man Needs A Woman” (Goldwax 3002) も豊かな内容を持つもので、オリジナルにこだわりたい人なら、2枚共必携盤だろう。
だが、リイシューは日本で進んでいて、今さらオリジナルにこだわる必要もないと言えないこともない。
最初LP化された時には、以上の2枚をベースとし、さらに1枚LPが作られていたが、現在は『ユー・ガット・マイ・マインド・メスド・アップ』 (VGCD-002)、『ア・マン・ニーズ・ア・マン』 (VGCD-005) に、43曲が収録され、この2枚のCDがそのまま必携ということになった。
特に、後者にはアトランティックに買われた名作「ホールド・オン」も収録されており、究極のCD化という感じはする。
その「ホールド・オン」を除けば、ジェイムスの録音はすべて69年以前に集中している。
良き60年代という見方もできよう。
そのアトランティック録音の後は、ずっと飛んで77年の “Let Me Be Right / Bring Her Back” のシングル盤のみということになるが、これは残念ながら未だにアルバム化されていない。
かなりの力作なのだが。
78年に来日。
そして、80年代末に起った突然のジェイムス・カーへの注視の目。
よもやカムバックとは、と思っていたが、遂に90年になって『テイク・ミー・トゥ・ザ・リミット』 (VGCD-007) を発表したのには驚いた。
従来通り、ヴィヴィド・サウンドが先発になるが、その後アメリカ、イギリスでも続いてCD化され評判を呼んでいるようだ。
当然20数年前はメンフィスのクラブをにぎわせていたミュージシャンはいない。
リッキー・ライアンという自分でもカントリーのレコードを出している人が主に音作りをしている。
ゴールドワックス時代のような音の厚味は望むべくもないが、全盛期を知っているクイントン・クランチがやっているだけに、実に彼を理解している。
続く『ソウル・サヴァイヴー』 (VSCD-048) でさらに前進した。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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