JAMES BROWN / Revolution Of The Mind
LP (Polydor PD-3003)
Producer: James Brown
68~70年におけるJ.B.のダンス・ビートに向けた執念は尋常ではない。
徐々に複雑な構成を試みる中での極度に過熱するヴォーカルと自由な発想を高めていくバックのサウンド。
この類稀なる実験的精神は、やがて、リズムのうねりを重視した、持続力のある強靭なグルーヴ=ファンクへと結実することになる。
当時のJ.B.の鬼気迫る凄さを捉えたアルバムとなれば、アポロでのライヴを収めた本作に尽きるだろう。
互いにせめぎ合うリズムの嵐の中を、60年代とは異なる太い乗りで駆け抜けるJ.B.。
スタジオ録音よりは速いテンポで処理しながらも、全編に感じさせるルーズな粘着性が圧倒的な肉体感を際立たせる。
J.B.のヴォーカル、リズム・セクション、ホーン・セクションが、以前に比較すると、更に表現の可能性を獲得する一方で、全て渾然一体となって乗りとイメージを展開させていくのである。
徹底してハードなA(1)、シンプルな組み立てから生み出される呪術的リズムに乗ってJ.B.とボビー・バードが熱っぽい掛け合いで燃え上がるA(3)、アーシーなファンク臭が漂うジャム風のB面、とりわけC(2)から最後まで、クライマックスへ向かう、めくるめくグルーヴが極め付け。
その過激さにはアヴァンギャルドな雰囲気さえ感じてしまう。
あまりにもホットな内実と対比するクールネス。
J.B.の最高傑作との評価に偽りはない。
▶Some More from this Artist
- “Ain’t It Funky”
- “It’s A New Day So Let A Man Come In”
- “Soul On Top”
- “Sho Is Funky Down Here”
- “Sex Machine”
- “Hey America”
- “Super Bad”
- “Hot Pants”
- “Revolution Of The Mind”
- “There It Is”
- “Soul Classics”
- “Get On The Good Foot”
- “Black Caesar (Original Soundtrack)”
- “Slaughter’s Big Rip-Off (Original Motion Picture Soundtrack)”
- “Soul Classics Vol. II”
- “The Payback”
- “Hell”
- “Reality”
- “Sex Machine Today”
- “Everybody’s Doin’ The Hustle & Dead On The Double Bump”
- “Hot”
- “Get Up Offa That Thing”
- “Bodyheat”
- “Mutha’s Nature”
- “Jam/1980’s”
- “Take A Look At Those Cakes”
- “The Original Disco Man”
- “In The Jungle Groove”
①④はインスト。
③はジャズ/スタンダード風凡作。
この時代のスタジオ録音では、「イッツ・ア・ニュー・デイ」「ギヴ・イット・アップ・オア・ターン・イット・ルース」等の傑作を含むハードコアな②、各パートのフリーキーなアクションに黒い熱気が滲み出る「スーパー・バッド」を始め、粘っこいヴォーカルで聴かせるブルースやバラードを含む⑦が強力だ。
70年、ジョージア州オーガスタのライヴを収めた⑤(一部はスタジオ録音)は、絶頂期のJ.B.を捉えたライヴとして、⑨と並び称されるアルバム。
斬新さでは⑨だが、こちらは、それまでの総決算とも言うべき、円熟を極めた煮えたぎるようなグルーヴがうねる。
70年代のJ.B.の新たな出発点となるのが、「ホット・パンツ」他、4曲全てファンクで貫く⑧、ブーツィのベースが乗せる「トーキン・ラウド&セイイン・ナッシング」を含む⑩、柔軟性と鋼の強さを備えたボトム、より表現力を増したJ.B.やホーン・セクションが、ここでは抗し切れぬ魅力を持つ。
また、⑪はベストLPの形だが、この時期を代表する初LP化の「ソウル・パワー」「メイク・イット・ファンキー」が必聴。
⑬⑭はブラック・シネマのサントラだが、特に⑭はJ.B.&JBズ実力発揮の好盤。
⑫⑯⑰は全て2枚組。
幅広い音楽性、アレンジの妙も楽しめるが、ポイントは、優れた持続的グルーヴに匂い立つ、ルーツを踏まえたブラックネスの誇り高き輝き。
メッセージ色を強めた⑯も印象的だが、⑰は更に素晴らしい。
しかし、74年以降は幾分精彩を欠く。
J.B.だけに水準は保つものの、⑱はアイデア不足。
⑲⑳も二番煎じでスケールの縮小は隠せず、㉑㉒㉓は、新たなバックに応じたスタイルで聴かせる悪くないアルバム。
㉔㉕㉖は、ディスコ時代におけるJ.B.流回答。
J.B.としてはパワー不足ながら、一部でハウス先取りの観も。
㉗では、ブラッド・シャピロ制作。
南部録音が新鮮な感覚をもたらす。
尚、㉘は69~71年録音のファンク傑作を集めた最高の編集盤だ。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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