KIM TOLIVER / Come And Get Me I’m Ready
70年代初期は女性シンガーにとって、LPを出し易い状況にあったといえる。
ソウル界がしきりにクロスオーヴァーを求めていたし、さらにウーマン・リブの運動もあったしね。
このキム・トリヴァーも73年になって突如LPを出したが毛皮を着て歌っている姿を見ると、ちょっとピントがずれているのじゃないかと思ってしまう。
だが、LPの内容は70年代初期の雰囲気をよく伝えたものだ。
ドリス・デュークをさらにハードにむさ苦しくしたような歌い方をしてくれるのだが、それがイヤ味にならず、むしろ彼女の生の感情を伝えてくれるといった調子。
ニュー・ソウル運動にあまり同調したところを見せなかったのは正解だったと思う。
それらしき曲はメドレーのB(1)くらいで、後はA(1)(2)(3)、B(2)などスローではぐいぐい押してくる。
ただ、ロジャック、シュア・ショットなどシングルに傑作が多いのに反し、ここでは決定的な曲が見当たらないので、これを代表作とするのは心苦しいところもある。
今気がついたが、B(3)でギターを弾いているのはリトル・ビーヴァーだろう。
驚くことに、彼女にはキンヴァリー・ブリッグス名義のLPもある。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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