amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.33

音楽

JERRY BUTLER / He Will Break You Heart

LP (Vee Jay LP-1029)

Producer: Calvin Carter

[A] (1) He Will Break Your Heart (2) The Gift Of Love (3) Teardrops From My Eyes (4) Give Me Your Love (5) Have A Good Time (6) A Lonely Soldier [B] (1) Thanks To You (2) Sweet Was The Wine (3) Butterfly (4) After The Laughter (5) The Lights Went Out (6) I Found A Love

抑制の効いたバリトンに熱い思いを秘めた誇り高きバラディアー。

シカゴR&B流儀に則った美しいスタイリスト、ジェリー・バトラーである。

インプレッションズの「フォー・ユア・プレシャス・ラヴ」に代表される瑞々しく、どこか崇高な雰囲気も漂わすバラードから、エヴァー・グリーン感覚も麗しいポップなリズム・ナンバーまで、残されたヒット・ナンバーの数々は今もその鮮度を失ってはいない。

このアルバムは、60~61年録音作品を収め、インプレッションズ名義のA(2)、B(3)を加えたヴィー・ジェイからの1枚目。

ソロ・デビュー当初はポップ/スタンダード・シンガーとして売り出しを図った観もあったが、ビートのあるR&B感覚を持ったA(1)のヒットで新たな方向を獲得、ここではポップR&Bシンガーとしてより個性を明確にしたジェリーを見て取れる。

プレシャス・ラヴ・スタイルのA(2)(4)、少しモダンな作りのB(1)(3)といったナイーヴなバラードがいつもながら心に染み込むが、特に素晴らしいのは、ポップな中にもシカゴ色を感じさせるA(1)、センチメンタルなヴォーカルで泣かせるA(6)。

共にアーリー・ソウル的情感も鮮やかな、この時期のジェリーの傑作だ。

また、50年代の香りも残すリズム・ナンバーでの洗練を試みた都会的なタッチも美しいニュアンスを持つ。

端正な装いに、時代を生きる若々しいしなやかさを感じさせるR&Bアルバムである。

▶Some More from this Artist

  1. “Jerry Butler, Esq.” (Abner 2001)
  2. “He Will Break Your Heart” (Vee Jay 1029)
  3. “Love Me” (同 1034)
  4. “Aware Of Love” (同 1038)
  5. “Moon River” (同 1046)
  6. “Folk Songs” (同 1057)
  7. “Giving Up On Love” (同 1076)
  8. “Delicious Together” (同 1099)
  9. “The Best Of Jerry Butler” (同 1048)
  10. “More Of The Best Of Jerry Butler” (同 1119)
  11. 『ユア・プレシャス・ラヴ』 (UPS-2268)
  12. “Soul Artistry” (Mercury 61105)
  13. “Mr. Dream Merchant” (同 61146)
  14. “Golden Hits-Live!” (同 61151)
  15. “The Soul Goes On” (同 61171)
  16. “The Ice Man Cometh” (同 61198)
  17. “Ice On Ice” (同 61234)
  18. “You & Me” (同 61269)
  19. “The Best Of Jerry Butler” (同 61281)
  20. “Jerry Butler Sings Assorted Sounds With The Aid Of Assorted Friends And Relatives” (同 61320)
  21. “Gene & Jerry – One & One” (同 61330)
  22. “The Sagittarius Movement” (同 61347)
  23. “The Spice Of Life” (同 2-7502)
  24. “The Love We Have, The Love We Had” (同 1-660)
  25. “Power Of Love” (同 1-689)
  26. “Sweet Sixteen” (同 1-1006)
  27. “Love’s On The Menu” (Motown 850)
  28. “Suite For The Single Girl” (同 878)
  29. “Thelma & Jerry” (同 887)
  30. “It All Comes Out In My Song” (同 892)
  31. “Two To One” (同 903)
  32. “Nothing Says I Love You Like I Love You” (Phila. inter. 35510)
  33. “The Best Love” (同 36413)
  34. “Ice ‘n Hot” (Fountain FR-2-81-1)

アブナー/ヴィー・ジェイ時代は、バラディアーとしての性格が強く、主にR&Bとポップ/スタンダードの2つのスタイルに分けられる。

前者に相当するのが②④⑦、後者に相当するのが⑤⑥、中間をいくのが①(③は①の再発)。

⑧はR&Bスタンダードをチャーミングに料理した好デュオ・アルバム。

ベスト盤では初LP化曲を含む⑪が最も質が高い。

マーキュリー時代では、ジェリーのゴスペル・ソウル的側面が明らかになったライヴ⑭、ソウル名曲カヴァー集⑮を経て、フィラデルフィアでギャンブル=ハフと組んで録音した⑯で第二の絶頂期を迎える。

ジェリーのソウル的粘りを増した唱法、持ち前の粋な身のこなしがフィリーの洒落た感覚と絶妙にマッチし、「ヘイ・ウエスタン・ユニオン・マン」を始めとする5曲ものヒットが⑯から生まれている。

⑰⑱も同系統のいいアルバムだ。

⑳以降はやや迷いが見えるが、ニュー・ソウル運動も見据えたシカゴのファンキーな音をバックに濃いヴォーカルを聴かせる㉖あたりは悪くない。

モータウン以降も誠実な姿勢は変わらず、アルバムごとに録音地を変え新たな音に挑むが、捨て難い曲もあるものの流石にかつての輝きは薄れている。

転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則

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