amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.47

音楽

THE TEMPTATIONS / The Temptations Sing Smokey

LP (Gordy S-912)

Producer: Bill “Smokey” Robinson

[A] (1) The Way You Do The Things You Do (2) Baby, Baby I Need You (3) My Girl (4) What Love Has Joined Together (5) You’ll Lose A Precious Love (6) It’s Growing [B] (1) Who’s Lovin’ You (2) What’s So Good About Goodbye (3) You Beat Me To The Punch (4) Way Over There (5) You’ve Really Got A Hold On Me (6) (You Can) Depend On Me

リーダーのオーティス・ウィリアムスは”コーラス・グループであって、リード云々は問題じゃない”と言うけど、テンプスと言えば、デヴィッド・ラフィンのリードというイメージが未だに付きまとっていることは事実だ。

在籍したのはわずか5年余り。

その間に残した作品が、モータウン全盛期と重なっていたために、彼の実力が遺憾なく発揮され、そのつきもほとんど使い果たしてしまった感があった。

今これを書いている時点でデヴィッド・ラフィン死亡のニュースが入ってきたが、残念ながら彼のその後の20数年は遂にこの時代を越えられずに終ったというのが正解のようだ。

「マイ・ガール」を含むあまりに有名なこのアルバムにしても、デヴィッドはA(3)(6)、B(1)の3曲しかリードを取っておらず、オーティスの言わんとするところもわからないではないのだが、この3曲となるとまるで違う。

思わず目がパッーと開いてしまう。

スタジオ録音ではそうでもないのだが、このデヴィッドという人は、やたら語尾を伸ばしてみたり、間投句を入れたりして1人で歌に酔っちゃうところがあって、それも何か危うさを感じさせ魅力のひとつになっていた。

とにかく声の伸びが他の4人とはケタ違いである。

特にA(3)(6)といった曲は名曲というしかなく、それゆえにデヴィッドは永遠に輝き続けているというわけだ。

彼らの2枚目に当たるこのアルバムは、タイトルからもわかるように、スモーキー・ロビンスンの曲ばかりを歌ったものだが、ちょうど連帯を強めていた両者にはピッタリの好企画となった。

エディ・ケンドリックスがリードを取る64年の出世作A(1)を始め、これ以上ないといった題材がずらり。

が、B面はさすがに全曲カヴァー曲となった。

B(3)はメリー・ウェルズ、他はすべてミラクルズの曲である。

このうち、テレンス・トレント・ダービーもカヴァーして有名になったB(1)、B(6)あたりがよく歌われている。

▶Some More from this Artist

  1. “Meet The Temptations” (Gordy 911)
  2. “The Temptin’ Temptations” (同 914)
  3. “Gettin’ Ready” (同 918)
  4. “Temptations Live!” (同 921)
  5. “The Temptations With A Lot O’ Soul” (同 922)
  6. “In A Mellow Mood” (同 924)
  7. “Wish It Would Rain” (同 927)

テンプスの歴史は複雑で、それゆえにファミリー・トゥリーまで作られる始末だが、デビュー・アルバムの①からして不可解なところがある。

これが出されたのが64年3月、デヴィッドが加入したのがその1月で、実際にレコーディングに加わっているのか微妙なところなのだが、いずれにせよリードは取っていない。

リードの大半はポール・ウィリアムスで、そのデヴィッドの声をラフにしたような声は十分に魅力的だ。

まだドゥー・ワップを引きずったようなところがあり、それがグループに深味をつけている。

「ジャスト・レット・ミー・ノウ」「ユア・ワンダフル・ワン」など確かに傑作である。

1曲「メイ・アイ・ハヴ・ディス・ダンス」という曲で少しドリフターズのルディ・ルイスに似た声のリードが出てくるが、これも初期のメンバー、エルブリッジ・ブライアントの可能性が強いと思う。

なお、『シングズ・スモーキー』と①を合わせたCD(R32M-2013)がある。

65年の②は第1の全盛期といっていい頃のもので、この中から6曲ものヒット曲が生まれているというからすごい。

デヴィッド、エディ、ポールと替る替るにリードを取っているが、3大名作のひとつ「シンス・アイ・ロスト・マイ・ベイビー」も入っているし、こちらが代表アルバムといってもおかしくない。

ポールがリードを取る「ドント・ルック・バック」も愛されている曲だ。

66年の③も同傾向が続くが、こちらはぐっとヒット曲が少なくなり、「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」と「ゲット・レディ」のみ。

したがって印象は地味だが、全体的に悪くない。

後にマーヴィン・ゲイで大ヒットする「トゥー・ビジー・シンキン・アバウト・マイ・ベイビー」にしても、彼らの方が出来はいいように思う。

この全盛期の勢いをそのままライヴにしたのが、66年末デトロイトのクラブ”アッパー・デック”で録られた④といいたいところだが、音も歌もかなり荒っぽい。

ライヴ盤としては後のロンドン・ライヴの方がいいような気もするが。

⑤~⑦ではスタンダード集の⑥はまあ問題外として、それでも一時ほどの勢いは感じない。

ヒット曲は多く生まれているのだが、⑥では「イッツ・ユー・ザット・アイ・ニード」が全盛期に迫る程度。

エディの歌う「ユーア・マイ・エヴリシング」もまあいい曲だ。

だが、⑦になるとぼくは評判ほどのアルバムとは思えない。

確かに「雨に願いを」という決定的な曲はあるけど、ぼくはこれとても彼らの3大名曲とかに入る曲ではないと思っている。

全体的にも勢いが足りなく、デヴィッドがこれを最後にグループをやめてしまうのも仕方なかったかなと思えてしまう。

エディの方はこの後も残り、さらにソロで活躍するわけだが、ソロ時代は取るに足りない。

なお、彼らの全時代を集めた『アンソロジー』(POCT-1515~6)で一望できる。

転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志

コメント

タイトルとURLをコピーしました