MARVIN GAYE / That Stubborn Kinda Fellow
LP (Tamla 239)
Producer: William Stevenson
肉感的エッセンスを染み込ませたソウル・グルーヴと心に宿すどこかブルーな陰影。
燃えるような情熱、心の痛みを知るデリケートな優しさを備えたマーヴィンにこそ、真の意味でのソウルマンとの形容は相応しい。
そんなマーヴィンのルーツとも言うべき若き日の熱唱をまとめた61年制作のアルバム。
未だアーシーな感触を残す力強いデトロイト・サウンドをバックに、野性味溢れる一途なヴォーカルを聴かせるマーヴィン。
熱っぽいジャンプ・ナンバーA(1)(3)、R&B臭濃厚なA(2)、モータウン流ポップ・センスを巧みに配したミディアム・ダンサーA(4)(5)、B(5)等、いずれも荒っぽいアーバン感覚に裏打ちされた素晴らしいノーザン・ソウルに仕上がっている。
加えて、こういったストレートな表現の中にも、独特のしなやかさやナイーヴな心の動きを感じさせるあたりが、マーヴィンならではの個性となる。
もっとも、ここでは何よりマーヴィンのR&B唱法、ヒットメイカーとしての色気、溌剌としたノーザン・ビートが最高であることは言うまでもない。
また、バックのマーサ&ザ・ヴァンデラスの黒っぽいコーラスの貢献も見逃せない。
▶Some More from this Artist
- “The Soulful Moods Of Marvin Gaye” (Tamla 221)
- “Recorded Live On Stage” (同 242)
- “Together” (Motown 613)
- “When I’m Alone I Cry” (Tamla 251)
- “How Sweet It Is To Be Loved By You” (同 258)
- “Hello Broadway” (同 259)
- “A Tribute To The Great Nat King Cole” (同 261)
- “Moods Of Marvin Gaye” (同 266)
- “Take Two” (同 270)
- “United” (同 277)
- “You’re All I Need” (同 284)
- “In The Groove” (同 285)
- “M.P.G.” (同 292)
- “Easy” (同 294)
- “That’s The Way Love Is” (同 299)
重要作となるのは⑤⑫。
モータウン・サウンドの充実。
ホーランド=ドジャー=ホーランドの名曲、ソウル的ふくらみを増したマーヴィンの表現力が結びついた⑤は、マーヴィンにとっては最もモータウン色がうまく反映された傑作。
「エイン・ザット・ペキュリアー」「アイル・ビー・ドッゴーン」を含む⑧も同じく質が高い。
一方、ノーマン・ホイットフィールドのプロデュースによる「悲しき噂」を含む⑫は、新たなスタイルへ向かう契機となったアルバム。
ファンク的抑制感覚とノーザン・ソウルの結合がスリリングである。
また、この時代で欠かせないのがデュオ・アルバム。
中では、スウィートな恋人ムードがポップなモータウン・サウンドに乗って優れたコンビネイションを見せる⑩⑪がベスト。
その他では初期の熱っぽいライヴが聴ける②も貴重だ。
①④⑥⑦とあるポピュラー・ヴォーカル・アルバムは、出来はともかく抜け切らぬR&B臭が自然とマーヴィンの色となるあたりは気に掛けたい。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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