彼等のマネージャーであるキング・デイヴィスがブルックリンにある自分のクラブのバンドに、ビル・リスブルック (sax) とリチャード・トンプスン (g) をスカウトして結成させたハウス・ロッカーズがB.T.エクスプレスの前身である。
その後、メンバーを補強しながら、ハウス・バンドの枠から飛び出して徐々に力をつけてきた彼等は、マジソン・ストリート・エクスプレス~ブラザーズ・トラッキングとバンド名を変え、74年に入り、B.T.エクスプレスを名乗っている。
この時のメンバーは先の2名に、ビルの弟のルイス・リスブルック (vo/b)、カルロス・ワード (sax) 、テレル・ウッド (ds) 、デニス・ロウ (perc)、そして紅一点のバーバラ・ジョイス (vo) が加わった7人。
ジェフ・レインの下で制作した同年のデビュー・アルバム『ドゥ・イット』から表題曲と「エクスプレス」が大ヒットを記録して、彼等は一躍スターダムにのし上がっている。
ジェフ・レインとの密接な関係をキープする4枚目までは、どれもニューヨークを代表するバンドとしての気概に溢れた力強い内容になっており、ベストはこの中から選ぶのが妥当なのであろうが、ここでは敢えて80年代の到来に歩調を合わせ、新境地の開拓に成功したこのアルバムを選んでおくことにする。
プロデュース担当はモリー・ブラウン。
マイケル・ジョーンズ(カシーフ)が前作までバンドに在籍していたことが、彼を起用する遠因になっているのは間違いなさそう(この頃、既にカシーフはポール・ローレンスと共にモリーのマイティ M.プロダクションに籍を置いていた)。
当然のことながら、モリー好みのマイルドなサウンドが主体の制作になっている。
トレンドに迎合している向きもあるが、嫌味は全くない。
絶大なる人気を誇るスウェイ・ビートのB(2)、この曲に関しては今更何も言う必要はなかろう。
これに肉薄するダンサーはタイトな作りのA(3)だ。
出立はスマートだけど、彼等の振舞いは豪快そのもの。
A(4)は従来の路線に近い辛口のナンバーだが、このアルバムの中では立場が悪い。
だったらフェザー感覚のダンサーA(1)の方が快適だ。
しみじみと歌われたスローのB(3)での好演も捨て難い。
▶Some More from this Artist
①”Do It” (Scepter 5117) 74年
②”Non-Stop” (Roadshow 41001) 75年
③”Energy To Burn” (Columbia 34178) 76年
④”Function At The Junction” (Roadshow 34702) 77年
⑤”Shout It Out” (同 35078) 78年
⑥”1980″ (Columbia 36333) 80年
⑦”Greatest Hits” (同 36923) 80年
⑧”Keep It Up” (Coast To Coast 38001) 82年
秀作ファンクが目白押しの①、これは必聴の1枚。
バーバラの野性的な歌唱が堪能できる「ピース・パイプ」は②に収録。
カシーフとレスリー・ミングが在籍していたのは③④⑤。
この中では③が最も熱い内容。
特にタイトル曲の爆発力にはド肝を抜かれる。
バーバラはこの③を最後に脱退。
①のプロデュースはビリー・ニコラス。表題曲は抜群。
⑦には⑥と同様にモリーの手掛けた新録2曲が含まれており、双方、十分満足のゆく仕上がり。
この後、アーストーン他に数枚の12インチも残している。
転載:U.S. Black Disk Guide©細田日出男
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