LP (Cat 1603)
Producer: Steve Alaimo
男勝りのディープな唱法とファンキーな乗りを身上とするフロリダのレディ・ソウル、グエン・マックレー。
情熱がほとばしるかのような迫力たっぷりのストレートな表現、太いグルーヴは数多い女性シンガーの中でもトップ・クラスにランクされる実力派であることを証明するものに違いない。
このアルバムは75年に発表されたグエンのデビュー作。
いかにもマイアミらしい、カラッと抜けた、それでいて充分に南部の豊かさを盛り込んだTKサウンドに乗って、まるで洗練とは無縁の荒っぽい感触を持ったアーシーな歌い込みを聴かせるグエン。
リトル・ウィリー・ジョンのヒットとして知られるR&BバラードA(4)での、激しい高揚感を伴ったエモーショナルなヴォーカルがまず最高だが、クラレンス・リード作ならではの陰影を忍ばせたA(3)、表情豊かな表現と芳しい南部フィーリングで酔わせるエド・タウンゼント作の名作バラードB(1)も素晴らしい。
また、ファンクを隠し味としたA(1)、R&B感覚を活かした、B(2)といったジャンプ・ナンバーを見事にこなすあたりもグエンの魅力となる。
▶Some More from this Artist
①”Rocking Chair” (Cat 2605)
②”Together” (同 2606)
③”Something So Right” (同 2608)
④”Let’s Straight It Out” (同 2613)
⑤”Melody Of Life” (同 2614)
⑥”Gwen McCrae” (Atlantic 19308)
⑦”On My Way” (同 80019)
69年、夫のジョージとのデュオでデビュー。
ソロでは70年コロンビアに録音、5枚のシングル盤から「リード・オン・ミー」がヒット。
73年にはキャットに移籍。
75年、マイアミ・ソウル特有のキャッチーな味を持つミディアム「ロッキン・チェアー」で最高位を獲得。
①は上掲LPから1曲減らし、その曲を加えたもの。
②は夫ジョージとのデュオLPだが、好盤。
76年には、スティーヴ・アレイモ / クラレンス・リードのプロデュースによる③を発表。
それまでの直情的アピールや奔放なドライヴ感は薄れているが、マイアミのファンキーなサウンドに乗ってクラレンス・リード・ナンバーを粘っこく歌い込むグエンが実に魅力的だ。
78年の発表の④では、リード・アレイモに加え、フレデリック・ナイトがプロデュースを手掛ける。
全体にポップな色が増してはいるが、メル&ティムのカヴァー「スターティング・オール・オーヴァー・アゲイン」、コクのあるヴォーカルが印象的なヒット曲「ラヴ・インシュランス」が聴き物。
79年発表の⑤は、ベティ・ライトにプロデュースを任せ、ソウルフルな中にも洗練さを窺がわせる作りが成され、熟した雰囲気は悪くはないが、グエンの力量が活かされているとは言い難い。
81年、ケントン・ニックスのプロデュースによるニューヨーク録音⑥を発表。
「ファンキー・センセーション」を始めとするファンキーなアーバン・ダンサーがここは秀逸。
現在のクラブ・シーンにおけるグエンの人気はこの時期のスタイルによるものである。
82年発表の⑦はウェブスター・ルイスのプロデュース。
メロウな感覚を盛り込んだ都会の音をバックに強く歌うグエンが楽しめる。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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