no.7
CHUCK JACKSON / Any Day Now
ドラマティックなオーケストラ・サウンドを従えたハスキーなビッグ・ヴォイス。
無骨な歌いっぷりに漂わす男らしさと都会の哀愁。
重量感溢れるニューヨークR&Bを決めるミスター・エヴリシングこと、チャック・ジャクスンである。
54~59年には、デル・ヴァィキングスに在籍。
60年にソロに転じてベルトーンに録音。
翌年ワンドより「アイ・ドント・ウォント・トゥ・クライ」のヒットを放ち、スターへの道を進むことになる。
そのチャックの最も溌剌としていた頃の姿を捉えたのが、62年にR&Bチャート2位を記録したA(2)をフィーチャーした2枚目の本作。
ここでは美しいメロディを抑制を効かせて感傷的に歌ったA(2)で明らかなように、がむしゃらなシャウトで通した1作目に比べると個性も確立され、表現にも味わいが増しているのが見て取れる。
さり気なく語りを入れ、切々と歌うB(5)でのハート・ウォーミングな雰囲気は、A(2)と共に、単に迫力ばかりのシンガーではないことを証明してくれる。
勿論、パワフルなヴォーカルが損なわれた訳でなく、ポップ色も麗しいニューヨークR&BスタイルのB(1)(2)、ハード・ドライヴィングなジャンプ・ナンバーB(4)でのヴォルテージは並ではない。
ポピュラー・スタンダード的装飾も艶っぽく取り込んだ都会派R&Bシンガーのダンディズムを貫いたアルバムである。
▶Some More from this Artist
①”I Don’t Want To Cry” (Wand 650)
②”Encore” (同 655)
③”On Tour” (同 658)
④”Mr. Everything” (同 667)
⑤”Saying Something” (同 669) with Maxine Brown
⑥”Tribute To Rhythm And Blues” (同 673)
⑦”Tribute To Rhythm And Blues Vol.2″ (同 676)
⑧”Hold On We’re Coming” (同 678) with Maxine Brown
⑨”Dedicated To The King” (同 680)
⑩”The Early Show” (同 682) with Tammi Terrell
⑪”Greatest Hits” (同 683)
⑫”Arrives” (Motown 667)
⑬”Going Back To” (同 687)
⑭”Raindrops Keep Fallin’ On My Head” (VIP 403)
⑮”Through All Times” (ABC 798)
⑯”Needing You Wanting You” (All Platinum 3014)
⑰”I Wanna Give You Some Love” (EMI-America 17031)
ポップなメロディとダイナミックな唱法が結びついたタイトル曲が光る①は、スタンダード調も目立つが黒っぽい魅力が一杯の優れたアルバム。
成熟度を増した②も、R&B的甘さがこたえられない。
ライヴの③は観客の熱狂も凄く、当時の人気が窺える。
R&Bの名曲も混じえてカッコ良く聴かせる。
バラード中心の④は気取りが鼻につくが、この大仰な成り切りも魅力のひとつではある。
⑥⑦⑨は、名曲カヴァー集。
それよりは3枚ある女性とのデュオの方がお薦め。
ワンド以降では迫力の中にも大人の渋さを感じさせる⑭、モーメンツのメンバーが手を貸したニュー・ジャージー流スウィート仕上げ⑯もいいが、熱く迫るデトロイト・スタイルの⑫が最高だ。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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