GARNET MIMMS AND THE ENCHANTERS / Cry Baby
LP (United Artists UAL-3305)
Producer: Jerry Ragovoy
女性1人を含むエンチャンターズが、”クラー・クラー、ベイビー”とまさに泣き叫び、続いてガーネット・ミムズがそれに応える。
63年の大ヒット曲「クライ・ベイビー」だ。
ぼくにとっては、オーティス・レディングやソロモン・バークとの出会いも強烈だったが、この曲のようにそれに負けず劣らず強烈な印象を受けたものがあるから、ディープ・ソウルはやめられない。
そのうち徐々に回りのことが見え始めてくると、実はこの曲はむしろオーティスやバークの曲よりも前に大きなヒットを記録している。
そうかぁ、むしろこの曲がディープ・ソウルの原型なのだと、この曲を起点に考える癖がついた。
ジェリー・ラガヴォイ、バート・バーンズらのニューヨーク・ディープはこの曲によって完成、同時に以後の流行の発火点ともなる。
イーブニング・スターズなどゴスペル・グループでレコーディングを経験。
その後フィラデルフィアでゲイナーズなるR&Bグループを結成と、パイオニアたる資格は十分にあった彼の渾身を込めた傑作だ。
このLPはその彼らの正式なデビューLPということになるが、B(2)が別格にすごい曲だとしても、A(5)(6)、B(1)と平均以上のディープさが続くだけに、やはり名盤というしかないだろう。
なお、B(1)はジャケットでは “Runaway Lover” となっているが、「トゥルース・ハート」が正しい。
▶Some More from this Artist
先に触れたゲイナーズ時代の作品は、後に “Sensational New Star” (Guest Star 1907) 他でLP化されたが、収録されているのも8曲だし、正直いってまだ眠っているような作品群である。
その後のLPを列記してみよう。
- “As Long As I Have You”
- “I’ll Take Good Care Of You”
- “Live”
- “Has It All”
ディープ・ソウルのパイオニアのひとりにしては少ないものだ。
確かに、東海岸の人だけにポピュラーな面もあるが、そんなことを言うなら、ソロモン・バークだってある。
①は、先のLPと継続した内容だが、エンチャンターズははずれ、曲によってはスウィート・インスピレイションズの前身(シシー・ヒューストン、ディー・ディー・ワーウィックら)の声がぼくには聞こえる。
個人的にはやはりエンチャンターズのコーラスが忘れられないが、「ワン・ウーマン」などさすがの力作だ。
1枚目より落ちるが、やはり持っていたい1枚である。
66年の②となると、一聴して音が新しくなっていることがわかる。
メンフィス・ソウルの影響なのだろうが、とにかくタイトル曲は「クライ・ベイビー」と並ぶ2大傑作となった。
後半の盛り上がりなんかほんと鳥肌が立つほど。
スローはほとんどこれ1曲で、後はミディアムやアップの作品が目立つといったLP。
この頃、どういうわけか、イギリスで人気が出、単独で渡欧し、作られたのがつぎの③、イギリス人がバックをやっているので、確かにリズムに張りはないが、意外な聞き物になっていて無視する必要はない。
この後ではヴァーヴ時代がぼくは非常に好きなのだが、LPは生まれなかった。
やっとできたのが、78年の④で、1,2曲を除くと、昔の面影はそこにはない。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
コメント