MAXINE BROWN / The Fabulous Sound Of Maxine Brown
LP (Wand 656)
Producer: Unknown
どうも日本では過小評価されているような気がして仕方がないのだが、このマキシン・ブラウンは、ベイビー・ワシントンとともに60年代前半のイースト・コーストのアーリー・ソウルを代表する女性シンガーである。
もともとはサウス・キャロライナの出身だが、50年代後半にはニューヨークに進出し、地元のノーマ・レーベルから「オール・イン・マイ・マインド」「ファニー」の大ヒットを飛ばしている。
ABCパラマウントを経て、62年からはワンド・レーベルに移り、そこで一時代を築く。
同レーベルに在籍していたのは68年までで、その後は、エピック、アヴコ、コモンウェルス・ユナイテッドなどに吹込みがある。
このアルバムは、ワンドから62年頃にリリースされたマキシンのデビュー・アルバムで、ノーマー、ABCパラマウント時代の作品を集めたものである。
その前述のヒット曲A(1)、B(1)はともに優れたアーリー・ソウル・バラードで、力強さと情感を合わせ持った彼女の代表作といえる。
マキシンという人は、どちらかというとバラードに持ち味を発揮するタイプのシンガーで、A(3)(5)、B(3)(5)といったバラードでの彼女のピュアな歌いぶりには、心を洗われる思いがする。
もちろんジャンプ・ナンバーも悪くなく、B(6)あたりでのパンチの利いたヴォーカルはなかなかのものだ。
その他、伸びやかに歌ったミディアムのA(2)も気に入った。
アルバムを通じて、彼女が時折見せるゴスペル・ルーツにも注目したい。
また、彼女の歌を支えるサウンドも、当時のニューヨークらしい素朴さを持ったモダンなサウンドで、好感が持てる。
▶Some More from this Artist
- “Spotlight On” (Wand 663)
- “Saying Something” (同 669)
- “Hold On We’re Coming!!” (同 678)
- “Out Of Sight” (Epic 26395)
- “We’ll Cry Together” (Commonwealth United 6001)
- “Like Never Before” (Kent 047)
①は内容的にはデビュー・アルバムの延長線上にあるもので、聴きものはバラードで固められたサイドA。
ヒットした「オー・ノー・ノット・マイ・ベイビー」「イッツ・ゴナ・ビー・オーライト」、ゴスペル的な「カミング・バック・トゥ・ユー」など、マキシンらしさの出た好曲が並ぶ。
次の2枚②③は、ワンド・レーベルのドル箱スター、チャック・ジャクスンとのデュエット・アルバムである。
この65~67年のマキシンたちのヒット曲は全て他人の曲の焼き直しで、制作陣の安易な発想が残念だ。
2人がデュエットすることによって、そこから目新しさ以上のものは生まれておらず、かえってマキシンの良さが薄まってしまっている。
④は68年頃のアルバムで、マイク・テリーの制作したものである。
作りはすっかりノーザン・ソウルになっているが、内容はワンド時代後半よりも良い。
⑤は70年頃のアルバムで、マキシンのヴェテランらしい落ち着いた歌を味わえるアルバムだ。
軽い作りの物足りない曲もあるが、素直に歌われたタイトル曲などのバラードが特に良い。
⑥はワンド時代の未発表曲集で、オーティス・レディング制作局やライヴ録音を含んでいるので注目したい。
転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵
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