BABY WASHINGTON / Only Those In Love
LP (Sue LP-1042)
Producer: Juggy Murray
60年代初期を代表する女性シンガーの中では、バーバラ・リンと双璧といってもよい。
バーバラがテキサスの田舎からギター片手にブルース畑から出てきたとしたら、このワシントンはニューヨークのゴスペルやドゥー・ワップ畑から出てきたシンガーというところか。
いずれも、力強い歌い方を持ち味としているが、ソウル・シンガーよりR&Bシンガーの呼び名が似合うこともまた事実である。
その彼女の代表作を特定するのは難しいが実績という点で一番華やかだったのは、62~66年のスー時代だった。
LPは2枚あるが、これはそのうちの2枚目。
1枚目と甲乙つけ難いというよりはどっちもどっちといった内容である。
この時代の代表作A(1)にしても、曲自体はかなりポピュラーなバラードだが、そのアレンジや力強い歌い方にヒタヒタと押し寄せるソウルの波を感じ取ることができるといった内容。
曲としてはアーリー・ソウル・バラード的なB(1)(5)、さらにA(5)あたりにこの人の良さを感じることができる。
▶Some More from this Artist
ベイビー・ワシントンは本名をジェネット・ワシントンといい、主にニューヨークやニュー・ジャージーあたりをベースに歌ってきた女性シンガーだ。
バトンからレコードを出しているハーツという混声グループに在籍し、57年にJ&Sからソロとしてデビュー、さらに59年に「ザ・タイム」のヒット曲で鮮烈な印象を与えたが、このネプチューン時代はオリジナルLPが作られることがなかった。
この曲や「ザ・ベルズ」などR&B的な曲調を歌うベイビーの歌声が実にまぶしく、個人的には一番好きな時代である。
リイシューLPとして”The Best Of Baby Washington”(Collectables 5040)が出されていた。
スー時代にはもう1枚”That’s How Heartaches Are Made” (Sue 1014)があるが、こちらの方が珍しいかもしれない。
先のLPとは、3曲ほどダブる。
このタイトル曲もポピュラーな曲だが、なかなか味があり、カヴァーされることの多い曲だ。
他には「スタンディン・オン・ザ・パイアー」のようなブルージーな作品もある。
この後、内容的には芳しくないLP”With You In Mind”(Veep 16528)を経て、コティリオンでは南部録音を行うほどだったが、この時代がいわゆるディープ・ソウル・ファンには一番受けそうだ。
そのワシントンが突如カム・バックしたのが73年のこと。
ドン・ガードナーとのデュエットの形で、”Lay A Little Lovin’ On Me”(Master Five 901)を出した。
音が新しいこともあり、古いものを聞いた時のような抵抗感は少ないだろう。
ドン自身のソロも含まれているので、即推薦というわけにはいかないが、2人で歌ったモータウン産の名曲「フォーエヴァ」や彼女が1人で歌った「アイヴ・ガット・トゥ・ブレイク・アウェイ」はなかなかのものだ。
彼女は78年にも”I Wanna Dance”(AVI 6038)のLPを出しているが、これは半分がマスター・ファイヴのLPからのもので、新曲は5曲のみ。
初々しいジャケット写真に惑わされて買う必要はない。
ただし、「テル・ミー・ア・ライ」(この曲はルイス・フリーマンがオリジナル)あたりのしっとりとした味わいはさすが。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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