IKE & TINA TURNER / The Soul Of Ike & Tina Turner
LP (Sue LP-2001)
Producer: Juggy Murray
今なおパワフルな活動を続け、ロック・ファンの間でもすっかり有名になってしまったティナ・ターナー。
だがやはりR&B~ソウル・ファンとしては、アイクと組んでいた頃の猥雑なダイナミズムが忘れられない。
アイク&ティナはもともとはセント・ルイスの夫婦デュオで、60年頃から15年ほどの活動期間がある。
ご存知のように彼らの場合、デュオといっても歌うのはティナのみで、アイクはバンド・リーダー/プロデューサーである。
彼らはその15年ほどの間に40枚ほどのアルバムを残しているのだから、ジェイムズ・ブラウンに迫るハード・ワーキングぶりである。
実際、彼らのライヴ・ショー、”アイク&ティナ・リヴュー”は、J.B.のショーとともに60年代のソウル・ショーの代名詞的存在になっている。
さて、彼らの歴史を振り返って見ると、ヒット曲を連発し人々に彼らの名前を知らしめた60年代前半のスー時代。
レーベルを転々としながらも精力的にツアーをこなした60年代後半、ロックへの傾斜を見せつつ表現の幅を広げた70年代前半のリバティ/UA時代の3つに分けられると思う。
どの時代をベストとするかは人によって意見が様々だと思うが、全ての時代を貫いて輝くアイクとティナの泥臭いヴァイタリティが、まず魅力的である。
ここに選んだアルバムはアイク&ティナのデビュー・アルバムで、61年頃にリリースされている。
まだブルース臭さを残したアイクの作り出すサウンドと、若さ丸出しのティナの肉体的なヴォーカルの衝突が、独特の個性を生み出している。
B(1)は60年の大ヒット曲で、その後の彼らの路線を決定した曲である。
すなわち、女性コーラス・グループ、アイケッツを従えて、ゴスペル臭いダンス・ビートにティナが熱いシャウトを叩きつけるスタイルで、スー時代のその後のヒット曲は、どれも基本的にはこのスタイルを踏襲している。
同じ60年にヒットしたA(2)やA(1)(3)、B(6)がこの路線の曲で、力強い仕上がりを見せている。
こういった曲でのアイケッツとの掛け合いには、レイ・チャールズとレイレッツの影響も伺える。
一方、A(5)(6)、B(2)といったバラードでのティナのヴォーカルも強烈で、喉を壊しそうで聴いている方が心配になるほど。
もちろんまだ本当の歌の良さみたいなものは味わえないが、この若さと熱気には憧れてしまう。
そういった曲に比べると、語りのA(4)や軽い作りのB(3)(4)(5)は物足りない。
▶Some More from this Artist
- “Dynamite!”
- “Get It – Get It”
- “The Ike & Tina Turner Show”
- “Ike & Tina Turner Revue Live”
- “River Deep-Mountain High”
- “So Fine”
- “Outta Season”
- “Come Together”
- “Workin’ Together”
- “Live At Carnegie Hall”
- “‘Nuff Said”
- “Nutbush City Limits”
とても全ては紹介しきれないので、彼らの足取りがわかる範囲で抜粋してみた。
62年頃の①はスー時代のアルバムで、デビュー・アルバムとは6曲もダブるが、「イッツ・ゴナ・ワーク・アウト・ファイン」「プア・フール」「トゥ・ラ・ラ・ラ・ラ」など、この時代のヒット曲が全て収録されている。
63年録音の②は一転してブルース集で、当時のブルース・リヴァイヴァルに対応したものである。
内容的にはそうおもしろいものではないが、珍しい1枚だ。
③は初めてのライヴ・アルバムで、テキサスのクラブでの録音。
他人の曲が多いのが残念だが、当時の彼らのライヴでのエキサイティングな姿は捉えられている。
彼らにはライヴ・アルバムが多く、そのうち64年の④は一座のシンガーたちのショーケース的なアルバムだが、内容は濃い。
次の⑤はフィル・スペクターの元で吹き込んだ異色作だが、ハッキリ言ってつまらない。
ティナはウォール・オブ・サウンドに映えるようなシンガーではない。
68年の⑥は、時代を反映してサザン・ソウル色が感じられる好アルバム。
69年の⑦は再びブルース集で、アイクのブルースに対する愛着が感じられる。
ここまで目まぐるしくレーベルを移ってきたアイク&ティナだが、69年にリバティ傘下のミニットと契約してからは、よほど居心地が良かったのか、解散までこのUA系列に居座っている。
70年代に入ると、彼らは白人も視野に入れた活動を開始し、好んでロック・ナンバーを取り上げるようになる。
その最初の成果が⑧だが、まだ雑然としてまとまりに欠ける。
次の⑨の方がフッ切れた感じで、聴きやすい。
「プラウド・メアリー」など、彼らなりに消化したロックも良いが、タイトル曲でのティナの素直な表情に、彼女の歌手としての成長の跡が見られる。
そして71年録音のライヴ・アルバム⑩では、一回り大きくなった彼らのパフォーマンスを楽しめる。
72年の⑪、73年の⑫になると、ロックともソウルともいえない、独自の路線がさらにエスカレートしているが、それが特に魅力的だとも思えない。
転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵
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