amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.2

音楽

RAY CHARLES / What’d I Say

LP (Atlantic 8029)

Producer: Ray Charles

[A] (1) What’d I Say (2) Jumpin’ In The Mornin’ (3) You Be My Baby (4) Tell Me How Do You Feel (5) What Kind Of Man Are You [B] (1) Rockhouse (2) Roll With My Baby (3) Tell All The World About You (4) My Bonnie (5) That’s Enough

59年の大ヒット「ホワッド・アイ・セイ」を目玉として50年代末の録音を中心に組んだアルバム。

まずは、レイの代表的1枚といって間違いない。

当時としては斬新だったエレキ・ピアノのサウンド、軽快なラテン風味のビート、そして、レイとレイレッツによるゴスペル仕込みのコール&レスポンス。

2パートからなるA(1)は、実に痛快なダンス・ナンバーだ。

ジェシ・ヒルの「ウー・プー・パー・ドゥ」が同曲をヒントにしたものであることは良く知られている。

その他の曲もそれぞれ聴き応えがある。

B(3)は、「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー」の改作のような曲調。

B(5)も同様のスタイルだが、ぐっとビートが重く、レイの粘っこい唱法が全開となった傑作だ。

ゴスペルのムードも漂い、ソウルの息吹きを感じとれる曲だ。

異色なのはA(5)。

これもぐっと重くブルージーな曲だが、レイはピアノのみで、リード・ヴォーカルはレイレッツのメアリー・アン・フィッシャーだ。

B(1)は、レイのピアノを中心とした、ミディアムのR&Bインストだが、この曲や、A(1)でのエレピ、A(4)でのオルガンなど、レイのミュージシャンとしての意欲も感じとれるところだ。

尚、この中でA(2)とB(2)のみ52年と古い録音。

前者はニューオーリンズの匂いもほのかに漂い、後者はチャールズ・ブラウンの影響がうかがえる。

こうしたレイのルーツと、ソウル時代のとっかかりも一度に聴けるものというわけだ。

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さて、レイは「ホワッド・アイ・セイ」のヒットの約半年後、長年在籍していたアトランティックを離れ、ABCパラマウントと契約する。

そして、アトランティック時代のような、ゴスペル・スタイルを取り入れた熱いR&Bではなく、よりポピュラーな、洗練されたスタイルで、それまで以上の人気を博すことになる。

その発端となったのが、ABCからの3枚目のシングルとなった「ジョージア・オン・マイ・マインド」でホーギー・カーマイケル作によるこのバラードを、ストリングスも絡めた、ジャズっぽくゴージャスなものに仕上げたものだった。

同曲をフィーチャーした、ABCからのファースト・アルバム”Genius Hits The Road” (ABC 335)は、地名の絡んだジャズ / ポピュラーのスタンダードをゴージャスなオーケストラをバックにうたったもの。

これ以降、各アルバムごとにコンセプトを持たせた、いかにもLP時代というアプローチを見せるレイだった。

60年代以降のアルバムは、かなりの数があり、とても全てに触れることは出来ないので、重要と思われるアルバムを中心にピック・アップしていこう。

“Genius+Soul=Jazz” (Impulse! 2)

アトランティック時代にもミルト・ジャクソンと共演したり、ニューポート・ジャズ祭に出演などしていたレイだが、これはクリード・テイラーがプロデュースし、クインシー・ジョーンズらがアレンジ、バックにはカウント・ベイシー楽団ら一流ジャズ・ミュージシャンがついたもの。

レイはオルガンを弾いている。

しかし、1曲のヴォーカル・ナンバー(ブルース)も素晴らしいし、クローヴァーズのヒット曲のインスト版「ワン・ミント・ジューレップ」もR&B臭一杯だ。

なお、リイシューされたCD(PSCW-1041[日])は、”Genius Hits The Road”からの3曲が追加されている。

“Ray Charles And Betty Carter” (ABC 385)

 61年のアルバムで、ベティ・カーターとの完璧なデュエット・アルバム。

ソウル・ファンの興味になり難いだろうが、ポピュラー / ジャズ・ヴォーカル・アルバムとしては高品質だ。

CD(PSCW-1040[日])では、シングル作品(レイのソロ)が3曲追加されている。

それはR&Bファン向け。

“Modern Sounds In Coutry And Western Music Volume 1” (ABC 410)

“Modern Sounds In Coutry And Western Music Volume 2” (ABC 435)

 会社の反対を押し切って、C&Wのスタンダードを取り上げ、初のゴールド・ディスクとなったアルバムと、その続編だ。

「愛さずにはいられない」といった大ヒットを出し、新境地を開拓したわけだ。

その柔軟な姿勢には拍手を送りたいし、レイのヴォーカルも魅力的だと思うが、それまでのR&Bイディオムのレイの魅力とは全く違うということは言うまでもないことだろう。

尚リイシューCDの『グレイテスト・カントリー・アンド・ウエスタン・ヒッツ』(PSCW-1039[日])は、この2枚からの17曲に、3曲足したもの。

“Ingredients In A Recipe For Soul” (ABC 465)

 63年発表。

ある意味では、60年代以降のレイのスタイルを最も端的に表わした1枚かもしれない。

ポピュラー / ジャズ・スタンダード、C&W、そしてブルースと幅広い曲を、レイ流に。

尚、このリイシューCD(PSCW-1038[日])は、ブルージーなシングル4曲が追加され、価値を高めている。

“Ray Charles ‘Live’ In Concert” (ABC 500)

 64年、L.A.でのライヴ。

「アイ・ガット・ア・ウーマン」等のアトランティック時代のヒット曲や、レイレッツも熱いR&B、C&Wの「ユー・ドント・ノー・ミー」(スタジオ録音よりぐっとヘヴィ)、スタンダード・ナンバーまで盛りだくさんでゴージャスな1枚。

しめくくりは勿論「ホワッド・アイ・セイ」。

やはり多様なレイの顔がある。

“Crying Time” (ABC 544)

 アルバム・タイトルは66年の大ヒットで、原曲はバック・オウエンズによるC&Wだが、このアルバムはC&W集ではない。

「ゴーイング・ダウン・スロー」「ドリフティング・ブルース」といった、デビュー時からの得意曲や、パーシー・メイフィールド・ナンバー(2曲)などブルースっぽい曲が多い。

きれいなストリングス付きバラードもあるが、コースターズも取り上げていた、重厚なゴスペル・タッチの「レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド」などはソウル・ファン必聴の曲だろう。

ヴァーサタイルな魅力の出た名盤だ。

“Doing His Thing” (ABC 695)

 ABC移籍以降、最もソウル・ファンの興味の的となるのがこの69年のアルバムだろう。

アルバムの全10曲がジミー・ルイスの手による曲(共作もあるが) で、ファンキーかつブルージーな「イフ・イット・ウォズント・フォー・バッドラック」では、レイとジミー・ルイスの掛け合いも聴ける。

アップのファンキーな曲が多いが、スローの「ウィ・キャン・メイク・イット」は重厚なゴスペル・タッチの曲で秀逸。

“Portrait Of Ray” (ABC 625)

 これも69年のアルバム。

ポピュラーな曲が多いが、ジミー・ホリデイとの共作による「アンダースタンディング」は時代を感じさせる、ポジティヴなメッセージ・ソウル。

“A Message From The People” (ABC 755)

 72年のアルバム。

ニュー・ソウル運動にも触発されたような内容。

「アメリカ・ザ・ビューティフル」などは感動的な曲だが、そのメッセージも、ポジティヴではあるが、ストリート感覚は薄いのは仕方ないところだろう。

やはり72年の”Thorugh The Eyes Of Love”(ABC 765)なども悪くないが、その後はやはりポピュラー化したものが多く、ソウルのメインストリームとは別のところで”レイ・チャールズの世界”を作っていると言えそうだ。

83年にはCBSに移り、もろのC&Wアルバムも作っている。

転載:U.S. Black Disk Guide©小出斎

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