THE PERSUASIONS / I Just Want To Sing With My Friends
LP (A & M SP-3656)
Producer: Jeff Barry
“This album contains no other instruments than the human voice”をキャッチ・フレーズにレコードを出し続けて30年近くになるアカペラ・グループの重鎮パースウェイジョンズ。
スパイク・リーの90年の短編映画”Do It A Cappella”でも若手グループをモノともしない重厚なハーモニーは抜群の存在感を示していた。
人気はテイク6に、日本でのポピュラリティでは14カラットに劣るかもしれないが、「ソウル・ファンでも聞けるアカペラ」としてはやはり彼等こそが代表選手であることにマチガイはないようだ。
さて彼等は60年代中期ブルックリンで結成された5人組(後に4人)で、デビューは69年のミニット盤シングル。
“Party In The Woods / It’s Better To Have Loved And Lost “(Minit 32067)は楽器つきのディープなバラードだった。
翌70年にはロックのフランク・ザッパに認められ、彼のレーベルからライヴ・アルバム”Acappella”(Straight 6394)をリリース。
次いでキャピトルから”We Came To Play”(Capitol 791)、”Street Corner Symphony”(同 872)、”Spread The Word”(同 11101)という3枚のアルバムを出す。
ジェリー・ローソンのソウルフルなバリトンと効果的なベース、そしてソウルっぽい選曲でキャピトル時代はデビュー・アルバムよりずっと聞きやすい内容だ。
その後同タイプの”We Still Ain’t Got No Band”(MCA 326)を経てA&Mに移籍、”More Than Before”(A&M 3625)と今回ベスト・アルバムに選んだ” I Just Want To Sing With My Friends”(同 3655)を発表、ここで初めてアカペラではなくバックに演奏をつけた彼等が聞ける。
もちろん後者のA(3)「オー・ホワット・ア・ナイト」での完璧なアカペラ・テクニックもスゴイが、やはりソウル・ファンにはバックと一体になってグングン乗るA(2)、B(1)(5)での迫力あるグループ・ハーモニーが最高だろう。
しかし、アカペラを追求する彼等は以後の”Chirpin'”(Elektra 1099)、”Stardust”(Catamount 905)といった地味な作品でディスコ狂乱時代の70年代を乗りきり、「レット・ゼム・トーク」の入った”Comin’ At Ya”(Flying Fish 093)を79年に、80年代に入ってからは4人組になって”Good News”(Rounder 3053)を82年に、グループ結成20周年記念の”No Frills”(同 3083)を84年にと、どのアルバムでもアカペラに徹し、ゴスペルからドゥー・ワップ、スタンダードからソウル等あらゆるスタイルの曲を彼等流に料理、つまりソウルフルなリードにファルセットやベースがハモりにハモるという一貫したスタイルを続けている。
88年リリースの今のところ最新のフル・アルバム”Live In The Whispering Gallery”(Hammer N’ Nails – HNCD 1988)も全く同じ。
ソウル・ファンの我々としては正直なところアルバム全曲がアカペラというのは少々キツイのだが(多分2度とあのA&M時代のソウル・スタイルはやってくれないだろう)、頑固一徹のパースウェイジョンズはこれで良いのかもしれない。
転載:U.S. Black Disk Guide©高沢仁
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