amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.351

音楽

THE SOUL CHILDREN / Genesis

LP (Stax STS-3003)

Producer: Jim Stewart, Al Jackson Jr.

[A] (1) I Want To Be Loved (2) Don’t Take My Sunshine (3) Hearsay (4) All That Shines Ain’t Gold (5) It Hurts Me To My Heart [B] (1) I’m Loving You More Everyday (2) Just The One (I’ve Been Looking For) (3) Never Get Enough Of Your Love (4) All Day Preachin’ (5) Get Up About Yourself

活動期間10年、その間にアルバム7枚。

決して多くはない数字である。

寡作アーティストといってもいいかもしれない。

が、そのどれもが傑作というにふさわしく、また密度が濃いことにおいて、ソウル・チルドレンは群を抜いている。

まばゆいばかりのそうしたアルバムを前にして、どれを選ぼうかと贅沢な悩みが何度か頭を巡る。

順当に選べば、スタックス3枚目かエピックの1枚目であろう。

今回は前者を選んだ。

深い意味はない。

強いていえば、彼ら最大ヒット曲のひとつA(3)が入っていることによるか。

72年。

スタックスも彼らも最高に充実していた頃である。

まずレイモンド・ジャクソンが開始を知らせるギターを弾き、それにつれリズムが動き出す。

この時こそスタックスの全盛ではなかったかと思わせるほどのノリ。

ジョン・コルバートの爆発ヴォイスにそれに応える3人。

何度この4人にノックアウトされたことだろう。

まず、A(1)で顔見せのごとく替る替るに4人が登場する。

女性2人のハモリから入り、最初に歌い出すのがジェルブラ・ベネット。

ワン・コーラスを終え、続いてリードを取るのがアニタ・ルイス。

おわかりだろうか。

ぼくも今の今までリードが交替したなんて気がつかなかった。

それほど2人の声はそっくりである。

女性が語り継いで、興奮するように入ってくるのがジョン、その部分はそのまま盛り上がって4人による乱舞となる。

それが落ち着いたところで最後にリードを取るのがノーマン・ウエスト。

そして終着点の興奮へとなだれ込む。

つまり1人ずつがほぼワン・コーラスずつリードを取るようになっているのだ。

計算されたものとはいえ、これほど1人1人の実力を見せ、またグループとしての充実ぶりを見せつけたものは他にあまりない。

8分強の時間が長いとは感じられないほどだ。

ちなみにこの曲はエンチャンターズ(ガーネット・ミムズのグループ)の曲のカヴァーである。

曲としてそれ以上にすばらしいのがA(2)。

A(4)も文句なしのバラードだし、ジョニー・テイラーのB(2)やパワフルなB(4)と最高の場面は続く。

レパートリーとして興味深いのがB(1)と(3)。

前者は確かブルー・キャット時代のロニー・ミッチェルの、後者はサーフィス時代のエディ・フロイドの曲で、オスカー・トニーも歌っていた曲。

ところで、この曲はロイ・Cのバンドがバックをやっているような気がしてならない。

いずれにせよ、聞き所満載の決定的名盤である。

▶Some More from this Artist:

  1. “Soul Children” (Stax 2018)
  2. “Best Of Two Worlds” (同 2043)
  3. “Friction” (同 5507)
  4. “Finders Keepers” (Epic 33902)
  5. “Where Is Your Woman Tonight?” (同 34455)
  6. “Open Door Policy” (Stax 4105)

ソウル・チルドレンは67年に結成の話があった。

ソロでレコーディングの経験があったジョンがオーティス・レディングに気に入られ、レコーディングすることになって4人組の方がいいだろうとメンバーが集められたのである。

ノーマンも既にソロ経験(→108)があったが、他の2人の女性は皆無で、最初のレコーディングは68年8月に行われた。

むろん、オーティスの死後だ。

①はその最も初期の作品を集めたもので「アイル・アンダスタンド」「ザ・スウィーター・ヒー・イズ」といった傑作バラードがヒットしているからたいしたもの。

ただし、アップはサム&デイヴの二番煎じ的でもうひとつ乗らない。

その完成は結局、「ヒア・セイ」まで延期される。

②は一転してマスル・ショールズ録音物。

2,3いい曲はあるが、当時のその地の音のしまりのなさがモロに現れてしまい、彼らの中では一番評価が低い。

それに対し、74年の③は文句なしの名盤。

中でも、アニタが切々と歌った「アイル・ビー・ジ・アザー・ウーマン」は彼ら最大のヒットとなった。

ドリス・デュークの「トゥー・ジ・アザー・ウーマン」以来続いてきた不倫ソングに終止符を打った(?)曲だ。

それにしても、アニタの歌はカーラ・トーマスによく似ているが、はっきり彼女以上の実力がある。

ジョンの一人舞台の「ホワッツ・ハプニング・ベイビー」などバラードに傑作が多い。

なお、スタックスにはLP未収録曲にも傑作が多い。

それを一部を含むベスト盤CD(VDP-5108)もあるが、この時代はほとんどエイス/Pヴァイン盤で聞くことができる。

76年にエピックに移籍。

この時シェルブラが抜け、3人組になっている。

あまりに2人の声が似ていたことと、「ジ・アザー・ウーマン」のヒットを奪われたことが原因か。

その後、彼女はシェルブラ・ディーンの名で何故かシングルを残している。

肝心のLP④の方だが、プロデューサーがドン・デイヴィスに代わったのに、全く持味が変っていないことに感心する。

タイトル曲と「ハイウェイ」が最高にエキサイティングな曲。

スローもいい曲が多く、特に「イフ・ユー・ムーヴ・アイル・フォール」には絶句。

この曲に既に”ブラックフット”の掛声があることをご存知か。

南部に戻って録音した77年の⑤も前作の勢いを受けて依然快調。

最後の⑥は復興したスタックスからのものだが、アップは迫力が減ったものの、スローは依然よし。

転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志


say-G’z 補足

2008年にカムバックアルバム”Still Standing”を発表しています。

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