JAMES BROWN / Please, Please, Please
LP (King 610)
Producer: Ralph Bass
ジェイムス・ブラウンといえば、ファンキー・ソウルの王者として有名なわけだが、ファンキー以前のR&Bシンガーとしても、非常に魅力的な存在であることを忘れて欲しくない。
56年にキング傘下のフィデラル・レーベルから「プリーズ・プリーズ・プリーズ」でデビューしたジェイムス・ブラウンは、そのスタートの時点においてさえ、既に実に個性的かつ独創的なシンガーだったのである。
このアルバムは、ジェイムス・ブラウンのデビュー・アルバムで、彼の56~59年の作品を集めたものである。
まず、前記のA(1)のオリジナリティに注目したい。
これはJ.B.のスクリーミング・ヴォーカルの冴えるヘヴィなバラードなわけだが、メロディといい、バックコーラスといい、実にゴスペル臭い。
この曲が56年というドゥーワップ/ロックン・ロールの時代に吹き込まれたとは、にわかには信じ難い。
また、これはシンシナティで吹き込まれたものだが、59年のニューヨーク録音のバラードB(1)になると、作りがズッとスマートになっている。
これもJ.B.を代表するバラードの1曲だが、この曲からはソウル・ミュージックの夜明けさえ感じられる。
結局このB(1)は、彼の初のナンバー・ワン・ヒットとなり、これによりJ.B.は南部から都会へ進出する第1歩を踏み出したのだった。
このアルバムには他にも、A(1)と同系のA(3)、B(8)、ブルージーなA(8)、B(5)(7)、カッコいいジャンプのA(2)(4)など、聴くべきものが多い。
やはりジェイムス・ブラウンの代表アルバムの1枚であることは、間違いない。
16曲も入った大サーヴィス盤である。
▶Some More from this Artist
- “Try Me!”
- “Think!”
- “The Amazing James Brown”
- “Night Train”
- “Shout And Shimmy”
- “Tour The U.S.A.”
- “Live At The Apollo”
- “Prisoner Of Love”
- “Pure Dynamite!”
- “Sings Out Of Sight”
この時代には、他にもスマッシュに6枚のアルバムがあるが、内容的には上の10枚。
①②③はデビュー・アルバムの続編的なもので、やはりバラードでの独自の唱法が印象的だ。
④はインスト・アルバムだが、タイトル曲はその後のJ.B.を示唆するジャンプ・ナンバーである。
⑤のタイトル曲もジャンプ曲で、この頃から彼のダンス・チューンに対する意気込みが感じられるようになり、それは⑥の「マッシュト・ポテトズ・USA」、⑧の「サインド・シールド&デリヴァード」へと繋がっていく。
また⑧のタイトル曲は、バラードの名唱として有名だ。
⑦⑨はライヴ・アルバムだが、⑦ではあくまでバラード中心だったのに対し、⑨ではジャンプ・ナンバーがふえ、ファンキー・ソウルに向かって爆発寸前のJ.B.を聴くことができる。
そしてJ.B.は、64年の「アウト・オブ・サイト」(⑩に収録)により、ファンキー・ソウルへの扉を開いたのだった。
転載:U.S. Black Disk Guide©泉山真奈美
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