MARTHA AND VANDELLAS / Dance Party
LP (Gordy 915)
Producer: Eddie Holland, Lamont Dozier, Brian Holland
モータウンのオフィスで秘書を努めていたマーサ・リーヴスが62年に仲間と共に結成したトリオで、ザ・マーヴェレッツ、シュプリームスと並ぶモータウンの3大ガール・グループのひとつ。
彼女だちにとって初レコーディングは、マーヴィン・ゲイの出世アルバム”That Stubborn Kinda’ Fellow” (63年)でのバック・コーラスだった。
同アルバムの裏ジャケットには、彼女たちの写真も載っている。
彼女たちの初の大ヒット曲「ヒートウェイヴ」(R&BチャートNo.1、ポップスNo.4/63年)は今も忘れ得ないが、同曲が収められている同タイトルのアルバムは、その曲以外は全て他人のヒット曲のカヴァー(ex.エンジェルスの「マイ・ボーイ・フレンズ・バック」)というお粗末な代物だった。
それに引き替え、カヴァー曲を含むものの、本アルバムの完成度は高い。
特に、荒削りと言ってさしつかえないM.リーヴスの向こう見ずなヴォーカルがアップ・テンポに良くマッチしたA(1)(4)は、無数に存在する”モータウン・クラシックス”に数え上げることが出来る。
時代が時代だけに(本アルバムがリリースされた前年、マーティン・ルーサー・キング,jr.牧師が先導する”ワシントン大行進”が行われた)、A(1)がブラック・ピープルを煽動して暴動が起こるのでは、と見なされ、当時アメリカのラジオ局ではエア・プレイを控えたという。
尚、同曲のコンポーザーはモータウン専属ライターだったウィリアム”ミッキー”スティーヴンソン(キム・ウエストンのもと夫)とマーヴィン・ゲイだが、マーヴィンは同曲でピアノ演奏も行っている。
A(4)はホーランド=ドジャー=ホーランドのペンに拠るもので、「ヒート・ウェイヴ」同様、典型的なH-D-Hサウンド。
A(4)のプロモーション・ヴィデオ(もちろんモノクロ)は当時デトロイトの自動車工場で撮影されたが、B(1),(3)は”デトロイト=モーター・シティ=モータウン”をPRするにはもってこいの楽曲である。
また、ミラクルズのカヴァーB(5)、バック・コーラスを担当した曲を今度は自分たちだけで歌ったマーヴィンのB(6)でも、威勢の良いM.リーヴスのヴォーカルを充分に堪能出来るという仕組み。
▶Some More from this Artist
- “Come And Get These Memories” (Gordy 902)
- “Heat Wave” (同 907)
- “Watchout!” (同 920)
- “Ridin’ High” (同 926)
- “Sugar ‘n’ Spice” (同 944)
- “Natural Resources” (同 952)
- “Black Magic” (同 958)
その他、グレイテスト・ヒッツやライヴ・アルバムもリリースされているが、本アルバムほどのクオリティは求め得ない。
70年にはメンバーがひとり入れ替わり、M.リーヴスがグループ存続に躍起だった様子が窺えるが、「ティア・イット・オン・ダウン」(72年)の小ヒットを最後にグループは敢なく解散、「アイム・レディ・フォー・ラヴ」(66年)、「ジミー・マック」(67年)など、今聴いても心が逸る名曲を残した彼女たちは、約10年でそのグループ生命を終えた。
転載:U.S. Black Disk Guide©泉山真奈美
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