LP (Tamla 231)
Producer: William Stevenson
グラディス・ホートンのパンチの効いた力強いヴォーカル、男性グループのスタイルに通じる厚みのあるコーラス・ワーク。
力量からすれば、マーヴェレッツは、数あるガール・グループの中で最も高い評価を受けてしかるべきであろう。
加えて、モータウンならではのポップ感覚が、10代の女の子のキュートな雰囲気を演出するあたりも魅力となる。
マーヴェレッツと言えば、まず大ヒット「プリーズ・ミスター・ポストマン」が思い浮かぶが、それより、モータウン的色彩がグループとしての完成度を高めた、彼女達にとっては3作目に当たる62年録音のこのアルバムを取り上げる次第。
何よりダンス・ビートにも長けたグループだけに、ここでもグラディスのハスキーなヴォーカル、ヴィヴィッドな躍動感を持つバック・コーラスが、キャッチーな魅力に豊んだ曲に弾けるA(1)(3)が最高。
明るくチャーミングなエヴァー・グリーン感覚が男性諸氏のハートを捉えるに違いない。
また、いずれの曲も芯の強い歌いっぷりが印象的だが、中でも素晴らしいのは、後にマーヴィン・ゲイも取り上げた美しいバラードB(1)。
切な気なヴォーカルに情感漂わすグラディスの表現が聴き物だ。
勿論、これらの曲には、他の女性グループには求め得ない泥臭いR&Bセンスが働いていることを見逃す訳にはいかない。
今も瑞々しさが色褪せることのない、モータウン・フレイヴァーも麗しい優れたアーリー・ソウル・アルバムである。
▶Some More from this Artist
- “Please Mr. Postman” (Tamla 228)
- “The Marvelettes Sings” (同 229)
- “Playboy” (同 231)
- “The Marvelous Marvelettes” (同 237)
- “The Marvelettes Recorded Live On Stage” (同 243)
- “The Marvelettes” (同 274)
- “Sophisticated Soul” (同 286)
- “In Full Bloom” (同 288)
- “The Return Of The Marvelettes” (同 305)
5人編成時の厚いコーラスが聴ける①は、名作「プリーズ・ミスター・ポストマン」。
スリリングなリード、男性顔負けのコーラスが聴けるバラード「ソー・ロング」。
キャサリン・アンダースンがチャーミングに歌うロッカ・バラード「ウィスパー」等を含む名盤。
未だ残る素朴さも愛らしい。
②はポップ/R&Bヒッツのカヴァー集で、少し大人しいが楽しい内容。
④ではホーランド=ドジャー=ホーランド、ノーマン・ウィットフィールドの曲を中心に取り上げていることでソウル的な新しさが感じられるが、ヴォーカルの充実は変らず。
艶っぽさを窺わせる「ストレンジ・アイ・ノウ」を始めとする成熟度を増した曲が収められた秀逸なアルバム。
黒人達の熱い声援に応えて溌剌としたステージを展開する、63年にデトロイトのクラブで録られた⑤では、マーヴェレッツの本質的な力量のほどが理解出来るに違いない。
67年以降は流石のマーヴェレッツも精彩を欠く。
⑥はモダン化に彼女達の個性がついていけず。
グラディスに代わってアン・ボーガンが加わった⑦⑧⑨は、3人編成ということもあって、すでに別の平凡なグループとの印象。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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