SMOKEY ROBINSON AND THE MIRACLES / Going To A Go – Go
LP (Tamla 267)
Producer: Bill “Smokey” Robinson
ソウルフルな優しさ、スイートなときめきを秘めたスモーキー・ロビンスンのファルセット、絶妙の抑制とタイミングを心得たバックのコーラス・ワーク。
モータウンにおいて多大なる貢献を残したスモーキーのプロデューサー、作曲家としての腕の冴えも見逃せない。
R&Bとポップの妙味を備えた、ソウル界で最も魅力的なグループ、唯一無二の個性を誇るスモーキー・ロビンスン&ザ・ミラクルズである。
モータウン・サウンドの最盛期と言えば、やはり60年代中期。
スモーキーのヴォーカルの成熟に伴うグループの充実が、その優れたサウンドと結び付き、スモーキーの作る曲にも新たな時代感覚が加わり、出来上がったのが、65年発表の本作。
繊細な甘さと軽い哀愁を漂わすスモーキー特有の表現が心に染み入るA(1)、ダンス・バンドとしての流行最先端をいくカッコ良さが弾けるA(2)、偉大なるスタイリスト、スモーキーのセクシーな歌いっぷりが絶品のバラードA(3)、コーラスが素晴らしい効果を発揮するキャッチーなスロー・ミディアムA(4)。
全編、時代と重なり合うと共に自らの個性を見事に際立たせるスモーキーの魅力が活き活きと躍動するが、中でもミラクルズを代表する名作に数えられるこの4曲はいずれもR&Bチャート上位にランクされるスマッシュ・ヒットを記録、商業的にも大成功を収めている。
いつまでも色褪せないポップな輝きを持つ傑作アルバムである。
▶Some More from this Artist
- “Hi We’re The Miracles” (Tamla 220)
- “Cookin’ With The Miracles” (同 223)
- “I’ll Try Something New” (同 230)
- “Christmas With The Miracles” (同 236)
- “The Fabulous Miracles” (同 238)
- “Recorded Live On Stage” (同 241)
- “Doin’ Mickey’s Monkey” (同 245)
- “Greatest Hits From The Beginning” (同 254)
- “Going To A Go-Go” (同 267)
- “Away We A Go-Go” (同 271)
- “Make It Happen” (同 276)
- “Gretast Hits Vol.2” (同 280)
- “Live!” (同 289)
- “Special Occasion” (同 290)
- “Time Out For Smokey Robinson And The Miracles” (同 295)
- “Four In Blue” (同 297)
- “What Love Has Joined Together” (同 301)
- “A Pocket Full Of Miracles” (同 306)
- “The Season For Miracles” (同 307)
- “One Dozen Roses” (同 312)
- “Flying High Together” (同 318)
- “1957 1972” (同 320)
- “Renaissance” (同 325)
- “Do It Baby” (同 334)
- “Don’t Cha Love It” (同 336)
- “City Of Angels” (同 339)
- “The Power Of Music” (同 344)
- “Love Crazy” (Columbia 34460)
58年、ベリー・ゴーディと知り合ったミラクルズはエンドに初録音。
エンド、続いてチェスに、それぞれ2枚ずつシングル盤を残す。
59年にはベリー・ゴーディがタムラ/モータウンを設立、ミラクルズは最初のアーティストとして迎えられ、60年にデビューする。
①は、60年のヒット「ショップ・アラウンド」をフィーチャーしたアルバム。
まだドゥー・ワップ色は残すものの、そうは言っても元来ドゥー・ワップとは若干異なるスタイルを見せていただけに、モータウンのビートと相まって、すでに独創性が認められる。
50年代の香りと新たな時代へ向けてのアイディアが触発し合う中を、粘っこく歌い込むスモーキーがこたえられない。
②ではもう少しずつヴァラエティを考慮した作りが成され、ややまとまりに欠けるきらいもなくはないが、この時代特有のロッキン感覚には思わず心惹かれるに違いない。
③では半数を占めるスタンダード曲はやや未消化だが、ポップ・フレイヴァーが巧みに盛られることでより新鮮なイメージを獲得したミディアム・ナンバーが、正しくエヴァー・グリーンの趣で最高。
その方向性を受け継いだのが、62年のR&Bチャート1位を記録した「ユーヴ・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」をフィーチャーした⑤。
ここでは、ドゥー・ワップやサム・クックを踏まえたスモーキーの骨っぽいR&B感覚とアーリー・モータウン色が美しいバランスを見せる。
以上4枚、R&Bスタイルのミラクルズの瑞々しい魅力がたっぷり味わえる優れたアルバムである。
⑥は当時のミラクルズのステージを捉えたもの。
「ユーヴ・リアリー・ガット・・・・・」を盛り込むなど、幾分ラフながらもスモーキーがエモーショナルに迫る熱っぽいライヴ。
発売順序は⑥の次になる④は、スモーキーの温かいキャラクターがいい雰囲気を醸す愛らしいクリスマス・アルバム。
⑦は63年のヒット「ミッキーズ・モンキー」を中心に、50~60年代の有名曲のカヴァーを集めたダンス・アルバム。
洒落たダンス・バンドとしてのミラクルズの溌剌とした乗りが楽しめる。
⑧はヒット集であるが、デビュー曲の「ゲット・ア・ジョブ」、バラード逸品「バッド・ガール」を始めとする、エンド、チェス時代の8曲が収められているので見逃せない。
⑨でミラクルズのモータウン・スタイルは確立され、この路線は⑩⑪でもフォローされるが、ただ、この頃より他のライターの作品がアルバムの半数以上を占めるようになり、スモーキーの個性が損われ気味の観も否めないところ。
「モア・ラヴ」「涙のクラウン」といった佳曲を含む⑪は聴き所も少くないが、⑩は平凡な出来に終始。
65年以降のヒット集⑫は、LP未収録あったミディアムの名作「アイ・セコンド・ザット・エモーション」が聞けるので重要。
ライヴ⑬は、彼らの魅力は見て取れるものの、本領発揮には至らず。
再びスモーキーの色を強め、新たにニュアンスを加えた成功作となったのが68年作の⑭。
かつての濃厚さは求め得ないが、ここは小粋な洗練が新機軸となる。
⑮⑯も同系統のアルバム。
⑰は、全曲バラードで、スモーキーのバラディアーとしての実力を再認識させられる味わい深いスウィート・ソウル集。
⑱⑳㉑は、若き日の輝きは薄れ、アヴェレージ作の域は出ないが、着実にヒットを放っていることからも分かる通り、スターとしての華は失ってはいない。
㉒はスモーキーのサヨナラ公演を収めたもので、数々のヒット曲が聴ける。
73年スモーキーの後釜としてビリー・グリフィンをリードに迎え新生ミラクルズはスタート。
スモーキーのワンマン・グループから一転、コーラスを活かしたグループとしての個性を重視した方向性を取る。
曲ごとにプロデューサーを変えた㉓は、ビリーのファルセットと年輪を窺わせるタイトなコーラスの絡みが見事で、好スウィート・ソウル・アルバムに仕上がっている。
㉔㉕も同様のスタイル。
やや鮮度は薄れてはいるもののオーソドックスな作りは悪くない。
都会的洗練を増しイメージ・チェンジを企てた㉖㉗では、ディスコ時代にあってやや個性を損ったきらいも否定できず。
ビリーの一人舞台となった㉘も決め手を欠く。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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