amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.5

音楽

BEN E. KING / Don’t Play That Song

LP (Atoco 33-142)

Producer: Bert Berns

[A] (1) Don’t Play That Song (You Lied) (2) Ecstasy (3) On The Horizon (4) Show Me The Way (5) Here Comes The Night (6) First Taste Of Love [B] (1) Stand By Me (2) Yes (3) Young Boy Blues (4) The Hermit Of Misty Mountain (5) I Promise Love (6) Brace Yourself

男らしく胸を張った、常にポジティヴな想いに貫かれた表現。

まるで都会のハード・タイムズを生きる恋人達に捧げられたかのような、力強くロマンティックな「スタンド・バイ・ミー」が全てを語る。

温かい歌心、硬質なダイナミズムを備えたニューヨークR&Bシンガー、ベン・E.キングである。

あのアポロ劇場のライヴ・アルバムでトリを務めるベン・E.の自信に溢れた歌いっぷり、黒人の女性達の熱狂的な声援を聴けば、その存在の大きさを認識出来るに違いない。

60年、ドリフターズから独立したベン・E.は、翌年、R&Bチャート1位に4週間もランクされる大ヒットB(1)で名を挙げることになる。

その当時の録音を集めたのが、62年発表のこのアルバム。

ドリフターズ時代より若干の洗練を見せ、持ち前のハスキーなバリトンでエモーショナルに歌ったB(1)、62年の大ヒットA(1)が、正しくR&Bクラシックスと呼ぶべき素晴らしさ。

メロディの優れたポップな曲をソウルフルに展開させる、シンガーとしてのベン・E.の魅力がこの2曲で味わえる。

また、フィル・スペクター作のバラードB(3)における、どこか哀愁を漂わせる熱っぽいヴォーカルも心に染み入るであろう。

勿論、ドリフターズ時代の個性を受け継ぐ、スパニッシュ・フレイヴァーを活かしたA(2)(6)、サム・クックあたりに通じるハート・ウォーミングなA(4)、B(5)(6)での、都会的でキャッチーな甘さにR&Bの粋なセンスが光る仕上がりも見逃せない。

また、ポマス=シューマン、リーヴァー=ストーラー、スペクター等に代表される、この時代のライターの素晴らしさも重要となるに違いない。

ニューヨーク感覚に彩られた、ベン・E.の個性でこそ作り得たスウィートでタフなアルバムである。

▶Some More from this Artist

  1. “Spanish Harlem” (Atco 33-133)
  2. “Ben E. King Sings For Soulful Lovers” (同 33-137)
  3. “Don’t Play That Song!” (同 33-142)
  4. “Greatest Hits” (同 33-165)
  5. “Seven Letters” (同 33-176)
  6. 『スタンド・バイ・ミー』 (アトランティック P-6181)
  7. 『ホワット・イズ・ソウル』 (アトランティック P-8617)
  8. “Rough Edges” (Maxwell 88001)
  9. “The Beginning Of It All” (Mandala 3007)
  10. “Supernatural” (Atlantic 18132)
  11. “I Had A Love” (同 18169)
  12. “Let Me Live In Your Life” (同 19200)
  13. “Music Trance” (同 19269)
  14. “Street Tough” (同 19300)

ベン・E.にとって最初のヒットとなった「スパニッシュ・ハーレム」をフィーチャーして作られたのが①。

ドリフターズ時代のスパニッシュ路線を発展させたこのタイトル曲は、概してソウル・ファンからの評価は高くないが、いかにもニューヨーク的な美しいストリート・イメージを喚起させるベン・E.ならではの名曲である。

ラテン風味を主としたアルバム自体は、ポピュラー・シンガーとしての側面が過ぎる感もある。

続く②は、R&B/ポップのヒット曲カヴァー集。

この時代のシンガーがよくやる、洗練されたポピュラーなスタイルでこなし、ベン・E.自身の持ち味がそれに近いところにあることを思えば、温い歌心を感じさせるあたり悪くはないが、本領発揮には到っていない。

④はベスト盤であるが、6曲の初LP化の曲を含む。

「ザッツ・ウェン・イット・ハート」「ハウ・キャン・アイ・フォゲット」といったR&Bシンガーとしてのハードな感覚を全面に出したナンバーが特に聴き応えがある。

カントリー・バラードを切々と歌い込んだ65年のヒット「セヴン・レターズ」をタイトルとした⑤は、時代の流れに則してソウル的な表現のふくらみを増したベン・E.が聴ける。

タイトル曲や、ソウル・スターラーズの名曲を下敷にした「アイム・スタンディング・バイ」等のディープな作品が含まれ、ソウル・ファンからは好評を得ている。

しかし、ディープと言えば、65~69年録音の未LP化シングルを集めた⑦が最高だ。

バート・バーンズ制作のダイナミックなニューヨーク・ディープからメンフィス録音のサザン・ソウル、ドン・デイヴィス制作のデトロイト録音まで、ベン・E.の熱気に溢れたヴォーカルが収められたアルバム。

ベン・E.のソウル・イヤーズの充実が見事に捉えられている。

尚、同じく日本編集のグレイテスト・ヒッツ⑥も、初LP化2曲を含む好選曲が成されている。

70年作の⑧は歌、演奏共に聴くべき所は全くないが、⑨ではベン・E.らしさも発揮され、かなり持ち直している。

しかし、復活がかなったのは、74年にR&Bチャート1位を獲得した「スーパーナチュラル・シング」ということになる。

軽快なファンキー・タッチのこの曲はベン・E.の新境地であったが、⑩には新しい音を巧みにこなしたバラードにいい作品が収められているあたりも評価しなければならない。

以降もバート・デ・コトーのプロデュースによる⑪⑬、メンフィス録音⑫、自らプロデュースした⑭を発表、いずれも現代感覚を備えた、意欲的な作品に仕上がっている。

転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則

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