LP (Motown M-617)
Producer: William Stevenson, Smokey Robinson
初期の「バイ・バイ・ベイビー」のヒット、そして64年のナンバー・ワン・ヒット「マイ・ガイ」、マーヴィン・ゲイとのデュエットと60年代に一世を風靡したメリー・ウェルズも、長く歌ってる割にはあまり注目されない一人だ。
64年に追われるようにモータウンを離れたこともその一因だろうが、やや息を抜き加減に歌うその唱法に、多くの人が中途半端なものを感じてきたことも事実だろう。
その唱法が目立つようになったのは、63年のナンバー・ワン・ヒット曲「トゥー・ラヴァーズ」あたりだろうが、それが完成を見たのが、彼女の最大ヒット曲A(3)だった。
ぼくなどには、R&Bのヒット曲とかモータウン・サウンド云々とか言う前に、当時のヒット曲としてなつかしい思いがこみあげてくるが、確かにモータウン・サウンドのいいところをいただいたティーンエイジ・ポップの名曲という感じがする。
この曲を除くと、このアルバムには典型的なモータウン・サウンドというのはあまり見当たらなく、A(2)が若干それを感じさせる程度。
フラミンゴスの有名なB(2)をいかにもモータウンらしい処理で聞かせたりしてはいるが、全体的にはやはり物足りなく、アルバムとしてはあまりすすめられないかもしれない。
それでも、A(1)とかA(4)のように、それなりに魅力的な曲があることはある。
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そんなわけで、アルバムが10数枚に及ぶ彼女を全部聞いているわけはないし、また全部聞く必要もないだろう。
デビューは60年と早く、まだレーベルとして危うかったモータウンのアクセルを踏み、そのレーベルを勢いづけるのに貢献したことは認めてよい。
その曲が「バイ・バイ・ベイビー」で、それをフィーチャーしたLP “Bye Bye Baby” (同 600)はモータウンの最初のものとなった。
この頃のメリーは基本的にガール・グループなどの流れにあるが、そのタイトル曲には普通の10代のシンガーでは作り得ない力強さがあった。
さらにそこに収録されている「レット・ユア・コンシエンス・ビー・ユア・ガイド」なども、良し悪しは別にして、ガール・グループでは考えられないほどゴスペルっぽい。
また、「バッド・ボーイ」や「プリーズ・フォーギヴ・ミー」あたりも聞かせる。
「バイ・バイ・ベイビー」から「ザ・ワン・フー・リアリー・ラヴズ・ユー」「ユー・ビート・ミー・トゥ・ザ・パンチ」と続く大ヒット曲は、確かにこの頃のメリーの代表作といえるもので、60年代初期の至らなさも含めて良い。
その後二者をフィーチャーして作られたのが、”The One Who Really Loves You” (同 605)で、歌手としてのメリーはこの辺までが一番魅力的といえるかもしれない。
その後には “Two Lovers” (同 607)、ライヴ盤 “On Stage” (同 611)、さらにマーヴィンとのデュエットLPがある。
65年以降は20世紀フォックス、アトコ、ジュビリーと移り、ビートルズの曲を歌った企画物を作ったりしているが、中でも比較的良いのが “Servin’ Up Some Soul” (Jubilee 8018)。
セシル・ウーマックと結婚したせいか、少しディープな作りだが、過大評価は禁物。
80年代のエピック盤、昔のヒット曲を再録したAllegiance盤はまるでダメだ。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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