LP (Gordy 931)
Producer: Edwin starr
42年テネシー州はナッシュビルにチャールズ・エドウィン・ハッチャーとして生れる(マニアに人気のあるロジャー・ハッチャーは彼のいとこにあたるとの事)。
幼くしてオハイオ州クリーヴランドに移り、10代後半にはフューチャートーンズというグループに参加、レコーディングも経験する。
兵役終了後はビル・ドゲッドのバンド・ヴォーカリストとして働き独立の機会をうかがっていたが、運よくゴールデン・ワールド・プロダクションと契約でき、傍系のレーベル、リック・ティックから発売したファースト・シングル「エイジェント・ダブル・オー・ソウル」が65年の7月にはヒット・チャートの8位まで上る大ヒットになるというラッキーぶりだった。
リック・ティックでは7枚のシングルを出し(そのうちの1枚 RT-109-X は世界に数枚という程珍しい)、その一部がこのアルバムにも収録されている。典型的なノーザン・ソウル・サウンドで、ミディアムからアップにかけてのエドウィンのはりきった歌い方が実にカッコ良い。
すこしテンポをおとしたB(4)もなかなかにいい味。
なお、昔イギリスででた”Ric Tic Relics” (EMI 11232)というオムニバス・アルバムで更に3曲のこの時代のエドウィンが聞ける。
あとホリデイズの”I’ll Love You Foever” (Golden World 36)のリードもエドウィンである。
▶Some More from this Artist
①”25 Miles” (Gordy 940) 69年
しっかりと決まるモータウン・ビートをバックにエドウィンのハリキリ・ヴォーカルは快調そのもの。
本当にどの曲も気持ち良く聞ける。
この後女性シンガーとのデュオ・アルバム”Just We Two With Blinky” (同 945)をリリース。
②”War & Peace” (同 948) 70年
ノーマン・ホイットフィールドとの出会い。
そして日本題「黒い戦争」のナンバー・ワン・ヒット。
バックのサウンドが時代を反映している。
次作”Involved”(同 956)も同路線の当時で言う”ニュー・ソウル”。
③”Hell Up In Harlem” (Motown 802) 74年
「シャフト」タイプのブラック・シネマのサントラ盤。
A面4曲め等聞かせる曲もあり捨てたものではない。
④”Free To Be Myself” (Granite 9180-1005)
事実上72年頃にモータウンを離れたエドウィンは74年にプロモーションのため来日したこともあり、次のレーベル探しに奔走していたようだが、75年に発売されたこのアルバムはカナダ系ディストリビュートのレーベルから。
やや中途ハンパな作りだがソウルフルなミディアムのA(1)、そして何よりB(2)「ベスト・オブ・マイ・バスト」というバラードでのド・ディープさが評判になった。
この後、慾6年カナダでGTOというレーベルにもう1枚アルバムを残す。
⑤”Edwin Starr” (20th Century 536) 77年
⑥”Clean” (同 559) 78年
⑦”Happy Radio” (同 591) 79年
⑧”Stronger Than You Think I Am” (同 615) 80年
70年代の後半はマネージャーのリリアン・カイルと共にカイル・プロダクション(後のA.S.K.レコード)を作り、以上の4枚のアルバムをリリース。
⑥からは「コンタクト」、⑦からは「ハッピー・ラジオ」の”ヒットするしかないアップの楽しい曲”をチャート・インさせ、全体にディスコ・タイプの曲でもエドウィンの熱気あるヴォーカルでそれを充分聞かせるものにしている。
個人的には⑥の「アイム・ソー・イントゥ・ユー」とか、⑦の「ドロウン・マイ・ハート」、⑧の「ネヴァ・ターン・マイ・バック・オン・ユー」等のゆったりしたミディアムでのソウルフルさが好きだ。
⑨”For Sale” (Avatar 1) 83年
82年にモンタージュで7インチと12インチを1枚出した後、自分のレーベルA.S.K.から12インチを2枚リリース。
このセッションをアルバム化したのがイギリス盤とフランス盤のみのこの⑨。
内容は彼の代表作といってもいい程の充実ぶりで、たとえばジョニー・テイラーの「プレイ・サムシング・プリティ」風のディスコ・クレイズの時代をのりきった後のある種ゆったりしたフンイキのなか、エドウィンのダイナミックなヴォーカルが圧倒的に聞かせる。
冒頭の「アイ・ワナ・テイク・ユー・ホーム」のリラックスした良さ、続く「スウィーテスト・シング」の気持ち良さ等何も言うことがない。
この後は居をイギリスに移しライヴ活動のかたわら、多数の12インチをリリース。
その中で出来の良いものというと、84年作のマーヴィン・ゲイに捧げた”Marvin” (Streetwave 1212) とか、ゆったりミディアムの傑作”It Ain’t Fair” (Hippodrome 10112) あたり。
テンポのあるものではモーター・シティやテンに入れた物が気持ち良かった。
⑩”You Can Have It” (East West 9031-73022~1)
これが90年の最新盤。
彼は軍隊時代ドイツ語の通訳をしていたということもあってドイツでの活動も多く、このアルバムもドイツ盤。
ハウス・サウンドもあるが注目すべきは彼の変らぬ熱気あるダイナミックな歌唱のスロー~ミディアム。
まだまだエドウィン・スターは現役である。
転載:U.S. Black Disk Guide©高沢仁
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