LP (RCA NFL1-8036)
Producer: Leon Sylvers III, Wayne Brathwaite, Steve Horton, La La Cope
これぞと思える曲はたくさんあるのに、これぞと思えるアルバムがなかなかない。
それがグレン・ジョーンズという男だ。
そんなわけで、どれをベストとするかという段になっていつも迷ってしまう。
これは彼にとって決して幸せなこととはいえず、実力的には超一流でありながら、まだ一流の地位を築くことのできない理由のひとつになっている。
つまり、その歌唱力を過信するせいか、その才を一点に集中させずにどうも分散させてしまう弊があるように思えてならない。
だがそうはいっても、彼は80年代以降に登場したシンガーの中で未だにぼくのナンバー・ワンであり続けているし、”これぞ”と思える曲を挙げるのはたやすい。
ノーマン・コナーズのLPで歌っていた「メランコリー・ファイア」、RCA以降の「キープ・オン・ドゥーイン」「アイ・アム・サムバディ」「ショウ・ミー」「ビー・マイ・レイディ」、そして最新作からの「ラヴ・ザ・ワン・ユア・ウィズ」や「エンドレスリー」。
こうした曲に立ち向かった時の至福感は何にも代え難い。
じゃあ、なぜこの第2作目を代表作にするかというと、もちろんA(3)もあるけど、全体の勢いが一番あると思えるから。
ウェイン・ブラスウェイトやララの関係したこの曲やA(2)、B(3)、意外やレオン・シルヴァーズが制作したA(1)など天才シンガーの名に恥じない出来ではある。
▶Some More from this Artist
グレンは58年9月27日生まれということだが、もう少し若いと思っていた。
10代のデビューと聞いていたからだ。
それでもゴスペルLP”With A Made Up Mind”(Savoy 14489),”Feel The Fire”(同 14551)をモデュレイションズ名義で出した時には、まだ20歳になったかならないかという時期には違いなかった。
ぼくはこの2枚を聞いて、彼の世俗音楽のルーツがスティーヴィ・ワンダーやダニー・ハザウェイにあるのではないかと悟ったのだった。
また、同じ頃彼はジェノビア・ジータやベティ・グリフィンのLPにギタリストとして参加しているが、前者の2枚目のLP(同 14597)では、あちこちでグレンの声が聞ける。
80年にソウルに転向。
ノーマン・コナーズ、ジーン・カーンのLPに客演しているが、前者の”Take It To The Limit”(Arista 9534)の中の「メランコリー・ファイア」は必聴であろう。
その後、完全に1人立ちした彼は83年にRCA入り、ミニLPの形だが”Everybody Loves A Winner”(RCA 8508)を出すことができた。
このLPでは「アイ・アム・サムバディ」と「キープ・オン・ドゥーイン」がすべて。
特に後者のジェノビアとの掛け合いはこの世のものと思えないほどすごい。
さらに84年にビッグ・ヒット「ショウ・ミー」が出たので、本来なら”シンガーズ・シンガー”の名をほしいままにするはずであった。
だが、続く86年の”Take It From Me”(RCA 5807)も人気を上げる手助けにはならなかった。
「ビー・マイ・レイディ」「ギヴィン・マイセルフ・トゥ・ユー」、タイトル曲など最高だと思うのだが。
87年にジャイヴ入りして「ウィヴ・オンリー・ジャスト・ビガン」(Jive 1062 所収)の最大のヒットを放つも内容的には後退。
90年の『オール・フォー・ユー』は「ステイ」でストリート感覚を入れ、鋭さが戻った。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
say-G’z 補足
アルバムリスト
“Everybody Loves A Winner” 1983
“Finesse” 1984
“Take It From Me” 1986
“Glenn Jones” 1987
“All For You” 1990
“Here I Go Again” 1992
“Here I Am” 1994
“It’s Time” 1998
“Feels Good” 2002
“Forever: Timeless R&B Classics” 2006
あと、2013年に「everyday」2018年に「you & me」2020年に「trust in me」「the first noel」とシングルを配信しています。
1987年のアルバムだけなぜか3曲のみの配信となってますが、他は全てAmazon Musicにて聞けます!
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