JAMES BROWN / I Got The Feelin’
LP (King 1031)
Producer: James Brown
40年近くに及ぶジェイムス・ブラウンの音楽は、かなり一貫性を持つものといっていいだろう。
一人のアーティストが歌い続けているのだからあたりまえといえば当たり前だが、そのスタイルとなるとおおよそ4つの時期に分けられ、微妙に異なった味わいを持つ。
こうした黒人アーティストの場合、何年か周期で起る地殻変動によってスタイル的にも変化を被むり、異なった味わいを持つようになるものだが、彼の場合は、むしろその地殻変動を起こす側にいて、常に音楽界をリードしてきたのが立派だった。
このガイド・ブックではとりあえず、64年までのR&B/アーリー・ソウル時代、60年代、70年代、80年代以降の4つに分類したが、先輩R&Bアーティストの影響が色濃い第一期や、むしろ若手にかつぎ出されて目をさました第四期を別とすれば、この時期や第三期には有無を言わせずに平伏させてしまう神通力があった。
ぼくはボビー・ブランドが来日した時、彼らの共通のドラマーであったジャボ・スタークスのことを手掛かりに、ジェイムスのことを彼にたずねたことがあるが、60年代のジェイムスは好きだったよ、の一言でかわされてしまった。
同様に60年代のファンキー・スタイルが一番好きなぼくとしては、つい相好を崩してしまったわけだが、こんなところで一人悦に入るのも情けないものだ。
ただ、この話からもわかるのは、60年代の彼の音楽がブルースや南部のソウル・シンガーに強い印象を残し、70年代の彼の音楽がむしろヴォーカル&インスト・グループに強い印象を残したように、そのスタイルは決定的に違っているということである。
あえてどちらかを選べとなれば、ぼくはやはり60年代を取りたい。
現在の多くのJ.B.ファンとは違っているかもしれないが、ぼくはむしろブーツィ・コリンズ加入以前の彼に一番惹きつけられる。
とはいえ、ぼくは60年代の彼を全部オリジナル・アルバムで集めてやろうとか、シングルを全部揃えようといったマニアではない。
ひと通り聞いてはいるが、手離したLPも多く、したがってこうした紹介には不向きかもしれない。
だが、その中にどうしても手離せないLPがあった。
それが、68年のこれである.
いうまでもなく、彼の代表作A(1)をフィーチャーしたもので、この曲がぼく自身彼の愛聴曲ベスト3に入るというだけでなく、全体的な作りがとにかく気に入っている。
吹き込み年代は67年3月から68年3月にかけて。
LPだとAB面の2曲目にブルースが来るという工夫がにくいし、今もライヴでは良く歌われるバラードB(1)も好きだ。
インストがA(4)(5)(6)、B(5)(6)と多いのも、LPだとかえって好ましいほど。
こういうのはやはりAB面引っくり返して聞きたい。
▶Some More from this Artist
さて、他のLPはとなるわけだが、この時代はやたら曲がダブっていたり、古い曲が入っていたりとまるで統一感がない。
オリジナルで集める愚を思い知らされるところだ。
そこまでオリジナルにこだわりたいなら、当然マトリックス順にならべるべきで、そうした全曲集がそろそろ企画されてもいい頃だろう。
一応、目ぼしいオリジナル盤を列記しておく。
- “Papa’s Got A Brand New Bag” (King 938)
- “I Got You (I Feel Good)” (同 946)
- “It’s A Man’s Man’s Man’s World” (同 985)
- “Raw Soul” (同 1016)
- “Live At The Garden” (同 1018)
- “Cold Sweat” (同 1020)
- “Live At The Apollo – Volume II” (同 1022)
- “I Can’t Stand Myself” (同 1030)
- “Say It Loud I’m Black And I’m Proud” (同 1047)
- “It’s A Mother” (同 1063)
69年までとなると、以上10枚。
いずれもタイトルだけ見ていると、あー、あの曲かとわかるものばかりだが、後は古い曲が並べられていたりする。
内容は決して悪くないのだが。
中で推薦できるのは、ライヴ盤2種⑤⑦(特に2枚組⑦のB面は最高にエキサイティング)と⑧⑨⑩くらい。
特に、⑧はライヴ作品から編集されたものだが、グレイトな「ゼア・ウォズ・ア・タイム」さらに「ゲット・イット・トゥゲザー」、バラードのいいのが入っているというもの。
ただし、タイトル曲は評判ほどぼくは好きじゃない。
これはダップスというグループがバックをやっているのだが、やはりドラマーは何といってもクライド・スタブルフィールドですよ。
一方、⑩は「コールド・スウェット」ナンバー2といった「マザー・ポップコーン」をフィーチャーしたもので、一時の冴えはないものの、”ポップコーン”づいた元気な彼が聞ける。
その間にはさまれた⑨はタイトル曲より「リッキン・スティック」、バラード「アイ・ゲス・アイル・ハヴ・トゥ・クライ・クライ・クライ」あたりに注目したい。
他のものとしては、彼のショーの模様を収録したLP2枚(King 1024, Smash 67087)もいいが、69~72年の珍しい作品を集めた”Motherlode” (CD Polydor 837126)が何といっても極めつけ。
未発表曲にもスゴイのがある。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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