amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.85

音楽

WILLIAM BELL / The Soul Of A Bell

LP (Stax 719)

Producer: Jim Stewart

【A】(1) Everybody Loves A Winner (2) You Don’t Miss Your Water (3) Do Right Woman–Do Right Man (4) I’ve Been Loving You Too Long (To Stop Now) (5) Nothing Takes The Place Of You (6) Then You Can Tell Me Goodbye 【B】(1) Eloise (Hang On In There) (2) Any Other Way (3) It’s Happening All Over (4) Never Like This Before (5) You’re Such A Sweet Thang

言うまでもなく、スタックスを代表するサザン・ソウル・シンガーの1人である。

同時に、オリジナル・メンフィス・ソウル・シンガーとも言える人で、彼の61年の「ユー・ドント・ミス・ユア・ウォーター」は、最初のメンフィス・ソウルとして、サザン・ソウルの歴史を考える上からも重要な作品だ。

この曲は、それほど泥臭くは感じられないものの、南部的な雰囲気を十分に持ったゴスペル臭い曲である。

61年という年代を考えれば、この曲が当時いかに新鮮な響きを持っていたかは想像に難くない。

ウィリアム・ベルは出身もメンフィスで、39年の生まれである。

デル・リーオスというグループを経て、61年にスタックスに入社。

先の「ユー・ドント・・・・・」を発表し、メンフィス・ソウルの基礎を築いている。

この極く初期の作品群は、充実した内容にもかかわらず、あまりアルバム化されていないのが残念だ。

運悪く63年からは兵役に服しているが、65年の復帰後もコンスタントにスタックスに録音を続けている。

どことなく知性を感じさせるのがウィリアムの特徴で、その抑制の効いた歌いくちが魅力的である。

個性的なシンガーだ。

これは67年のウィリアム・ベルの最初のアルバムで、A面がバラード、B面がジャンプ曲という構成になっている。

彼の持ち味がよく出ているのは、バラードではA(1)(2)(5)(6)あたりで、独特の穏やかな表情が印象的だ。

どれもメロディ・ラインの奇麗なバラードで、マイルドなウィリアムのヴォーカルと相俟って、心安まる作りになっている。

そういう意味からも、名曲のA(3)(4)はやや曲自体が重厚過ぎて、彼には合っていないようだ。

なお、有名なA(2)は再録ヴァージョンだが、オリジナルに比べて特に劣っているとも思えない。

一方のB面では、B(2)(4)でのノリの良さが光る。

こういった曲をやっても、くどくならないのが彼の良いところ。

彼は意外とこういったテンポのある曲でも良さを発揮してくれる。

ややアッサリした歌いっぷりながら、そこに味わいがある。

このうちB(2)は、いつものスタックス・サウンドよりも固めの音になっていて、しばしば話題になるところである。

他では、いかにもスタックスらしいA(1)(5)も悪くない。

また、A(1)(2)、B(1)(2)(5)はウィリアムの自作または共作で、彼のライターとしての優れた才能も知ることができる。

もう少し初期の曲やシングル曲を入れて欲しかったところだが、まずは彼の代表作と言えるものである。

▶Some More from this Artist

  1. “Bound To Happen”
  2. “Wow…”
  3. “Phases Of Reality”
  4. “Relating”
  5. “Coming Back For More”
  6. “It’s Time You Took Another Listen”
  7. “Survivor”
  8. “Passion”
  9. “On A Roll”

①は69年頃のアルバムで、ヒットしたスローの「アイ・フォーガット・トゥ・ビー・ユア・ラヴァー」が抜群の出来だ。

この曲は最近トミー・テイトも吹き込んでいた。

が、他の曲が物足りなく、全体的には低調なアルバムで推薦できない。

71年の②はデビー・アルバムに次ぐアルバムといえる。

マスル・ショールズ録音を中心としているためもあって、作りはかなり甘くなっているが、それもウィリアムに関してはプラス方向に働いており、彼の歌をしみじみと味わえる。

72年の③もマスル・ショールズ録音だが、こちらはロック的だったりカントリーっぽかったりレゲエ調だったりで、全く感心しない。

彼の知性派としての悪い面が出たアルバムだろう。

73年の④ではアル・ジャクスンが制作に当たっており、前作よりは締まりのあるアルバムだ。

それでも出来はやっと水準といったところである。

そして、スタックス倒産後はしばらくレコーディングから遠ざかっていたが、77年にはマーキュリーに移籍し、⑤を発表している。

聴きものは大ヒットした「トライン・トゥ・ラヴ・トゥー」で、彼らしさの出た軽いミディアムである。

物足りない曲も多いが、悪いアルバムではない。

デトロイト録音を含んでいるのも興味深いところである。

78年の⑥は再び南部録音で固めている。

やはりバラードでは甘さが目立つが、ミディアムでの軽快さは保持されており、彼のアルバムとしては聴ける方だろう。

また、彼は以前からジョージア州アトランタを本拠地としており、それは今日まで続いている。

以後の3枚のアルバム⑦⑧⑨も全てジョージアでの録音である。

それぞれ83, 86, 89年のアルバムだが、時代が変わっても彼のソフトな持ち味は不変だ。

曲によっては弱々しくて物足りないところも昔通りだ。

どれももう一つパッとしない内容ながら、彼のファンには安心して聴けるアルバムだろう。

また、スタックス時代のジュディ・クレイとのナイス・デュエットは、”Boy Meets Girl” (Stax 2024) で聴ける。

転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵

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