amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.86

音楽

SAM & DAVE / Hold On, I’m Comin’

LP (Stax 708)

Producer: David Porter, Issac Heyes

【A】 (1) Hold On, I’m Comin’ (2) If You Got The Loving (3) I Take What I Want (4) Ease Me (5) I Got Everything I Need (6) Don’t Make It So Hard On Me 【B】 (1) It’s A Wonder (2) Don’t Help Me Out (3) Just Me (4) You Got It Made (5) You Don’t Know Like I Know (6) Blame Me (Don’t Blame My Heart)

サム&デイヴは、言うまでもなくオーティス・レディングとともに初期スタックスの看板を背負って立っていたデュオである。

2人がデュオを組んだのは61年頃のことだが、ルーレットを経て64年にスタックスに入社してからは、飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット曲を連発している。

66~68年の2年間に「ホールド・オン・アイム・カミン」「ソウル・マン」の2つのナンバー・ワン・ヒットを含めて、何と7曲ものトップ・テン・ヒットを生み出しているのだから凄まじい。

作曲チームのヘイズ&ポーター、バッキング・ミュージシャンのMGズ、マーキーズとの最強のコンビネイションにより、いわゆるスタックス・サウンドを全国的にポピュラーな位置にまで押し上げた彼らの功績は非常に大きい。

また彼らに刺激されて、数多くのデュオが当時のソウル・シーンで活躍している。

ジェイムス&ボビー・ピューリファイ、モーリス&マック、サム&ビル、ピック&ビルなど、優れたデュオの枚挙に暇がない。

60年代後半にはデュオが一種のブームになっていたわけで、そこに独特のスリリングな黒い美学が形成されたのだった。

このアルバムは、サム&デイヴのスタックスでのファースト・アルバムで、66年にリリースされている。

彼らの中で一番自然に彼らの魅力が捉えられており、彼らの代表作となっている。

大半の曲は、例によってヘイズ&ポーターのコンビが作曲したものである。

大ヒットしたタイトル曲のA(1)は南部が生んだダンス曲の傑作と言ってよく、彼らのヴォーカルも良いが、いかにも南部臭く重いリズム・セクション、アーシーなホーン・セクションがまた素晴らしい。

A(3)、B(1)(5)などが同系の曲で、どれも弾力性のある優れたジャンプ・ナンバーで、彼らの張り切った姿が目に浮かぶようだ。

同じくジャンプのA(4)も文句のない仕上がり。

やはりこういったスタイルの曲では、彼らの持ち味がよく発揮されていると思う。

一方スローはA(2)(5)、B(3)(6)とあり、どれも力作だが、特にA(5)が優れた出来で、彼らのベスト・バラードとして推薦したい。

総合的に見て充実したサザン・ソウル・アルバムであり、同時にスタックス・サウンドやソウル・デュオを語る上からも忘れられないアルバムである。

2人の声を比較すると、甲高い粘りのある声がサム、低く粗い声がデイヴである。

この対照的な2人のヴォーカルの絡み合いが彼らの一番の魅力になっているわけだが、シンガーとしての実力はサムの方が上だろう。

▶Some More from this Artist

  1. “Sam & Dave”
  2. “Double Dynamite”
  3. “Soul Men”
  4. “I Thank You”
  5. “The Best Of”
  6. “Back At ‘Cha!”
  7. “Sweet & Funky Gold”

①は彼らのデビュー・アルバムで、63年にリリースされたものである。

スタックス以前の彼らの姿を知ることが出来てなかなか興味深い。

スタックス時代に比べると題材、バックともに物足りないが、それでも彼らのヴォーカル・スタイルの原型は既に出来ている。

②③はスタックスでの2枚目と3枚目のアルバムで、ともに67年にリリースされている。

アルバムの作りは『ホールド・オン・・・・・』の延長線上にある。

従って内容は悪いはずはなく、当然持っていたいアルバムである。

②はヒットした「ユー・ガット・ミー・ハミン」「セッド・アイ・ワズント・ゴナ・テル・ノーバディ」「ホエン・サムシング・イズ・ロング・ウイズ・マイ・ベイビー」をフィーチャーしたアルバムだ。

最後の曲は彼らとしては珍しいバラードのヒット曲で、やはり彼らを代表する1曲である。

ただアルバム全体では曲の粒がもう一つ揃っていないのが残念だ。

③は「ソウル・マン」のナンバー1ヒットを含んだアルバムである。

その曲は実に良くできたカッコいいジャンプ・ナンバーなのだが、逆に言うと初期のようなシンプルな魅力が減っているのがやや残念だ。

これはアルバム全体についても言えるが、それでも質の高さは保たれている。

次のアトランティック盤④は68年に発表されている。

スタックスでの最後のヒット曲「アイ・サンク・ユー」が含まれているが、全体的な印象はかなりモダンだ。

しかしそれもまだ悪くなく、70年代サザン・ソウルとの繋がりも感じられる好盤となっている。

69年の⑤はスタックス時代からのヒット曲を集めた単なるベスト盤だ。

この頃から彼らは商業的に振るわなくなり、しばらく活動を停止する。

そして75年に⑥でカムバックを果たしている。

レーベルは変わっても、制作陣やミュージシャンにはスティーヴ・クロッパー、アル・ジャクスンといった馴染みの名前が並び、彼らの持ち味も変わっていない。

もちろん以前と比べればヴォルテージは下がっているが、それなりに楽しめるアルバムだ。

最後の⑦は78年のアルバムで、彼らのヒット曲の再演集。

そこに新しい息吹を吹き込んでいるわけでもなく、昔の通り再演した懐古趣味的なアルバム。

あのディスコの時代に作られたとは思えないようなアルバムだ。

転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵


say-G’z 補足

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