LP (Stax 714)
Producer: Eddie Floyd
エディ・フロイドは37年にアラバマ州のモンゴメリーで生まれているが、すぐにデトロイトに移り、そこで55年にファルコンズを結成している。
66年からはソロ・シンガーとしてスタックスで活躍し、「ノック・オン・ウッド」のナンバー・ワン・ヒットで同レーベルの看板スターの一人になったわけである。
シンガーとしての実力は超一流とは言い難いが、作曲の才能とバックの良さに助けられ、スタックス初期には彼のシンガーとしての魅力が十二分に引き出されている。
これはエディの最初のアルバムで、大ヒットしたタイトル曲をフィーチャーした67年のアルバムである。
とにかくバックの音が実に決まっており、タイトル曲のヒットもこのバックがあればこそという感じだ。
もちろんエディ自身の歌にも軽量級の味わいがあり、初期スタックスを語る上でも忘れられないアルバムだ。
大半が他人のヒット曲で、エディのオリジナルがA(1)、B(1)(2)(4)とたった4曲なのが残念だが、これがこのままこのアルバムの聴きものとなっている。
ジャンプのA(1)、B(1)、スローのB(2)(4)とともに秀逸だ。
他人の曲のベストは、ジェリー・バトラーの優しさ溢れるバラードのA(4)か。
曲調がエディのソフトな表情にマッチしていて、良い仕上がりだ。
他の曲のオリジナルは、A(2)がクリス・ケナー、A(3)がJ.J.ジャクスン、A(5)がジェイムス・レイ、A(6)がチャック・ジャクスン、B(3)がウィルスン・ピケット、B(5)がトミー・タッカー、B(6)がパーシー・スレッジで、どれも平均以上の出来にはなっている。
▶Some More from this Artist
- “I’ve Never Found A Girl”
- “Rare Stamps”
- “You’ve Got To Have Eddie”
- “California Girl”
- “Down To Earth”
- “Baby Lay Your Head Down (Gently On My Bed)”
- “Soul Street”
- “Experience”
- “Try Me !”
- “Try Me !”
①は大ヒットしたタイトル曲を収録した69年頃のアルバムで、サウンドがややモダンになり重厚さがなくなったが、それもエディに関してはそう違和感はない。
エディの柔和な持ち味はよく出ていると思う。
②はベスト盤だが、半数の曲はこれでしか聴けないので持っていたいところ。
③④は69~70年のアルバムで、内容は①の延長線上にある。
悪くはないものの、徐々にポップ化され薄味になってしまったのは仕方ない。
72年頃の⑤はロック色を濃くしたアルバムでノー・グッド。
73年の⑥ではメンフィスを離れ、マスル・ショールズやウエスト・コーストで録音しているが、出来は平均的。
⑦は再びメンフィスに戻っての74年のアルバム。
スタックス後期ではまとまりのある1枚だ。
⑧はTKに移っての77年の作。
当然ディスコの影響が伺えるアルバムで、感心しない。
85年の⑨、ウィリアム・ベルのレーベルからの88年の⑩もともに冴えがなく、物足りない。
やはりエディはスタックス初期が一番、という月並みな結論になってしまった。
転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵
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