amazon music unlimitedでU.S. Black Disk Guide音源を探す旅 No.89

音楽

ARETHA FRANKLIN / I Never Loved A Man The Way I Love You

LP (Atlantic SD-8139)

Producer: Jerry Waxler

【A】 (1) Respect (2) Drown In My Own Tears (3) I Never Loved A Man (The Way I Love You) (4) Soul Serenade (5) Don’t Let Me Lose This Dream (6) Baby, Baby, Baby 【B】 (1) Dr. Feelgood (2) Good Times (3) Do Right Woman — Do Right Man (4) Save Me (5) A Change Is Gonna Come

思い出深きアルバム。

このジャケットを見るたびにそうした感慨がこみ上げてくる。

この日本盤LPがワーナーから出された時ぼくが書いたライナー・ノーツは、ぼくにとってライナーのデビュー作であった。

そして、CD化が相なった時に再びペンを執る。

とまあ、こんなことはその時も書いた気がするが、またまた何年かたってこうしてこのページでこのアルバムを取り上げる。

自分でも不思議なほど、それがマンネリにならないところに、アレサの持つ魔力がある。

とはいえ、このアルバムはそのためばかりで”思い出深き”ものになってきたわけではない。

まず鈍いキーボードの音色と共に、”ユーオ・ノー・グッド・・・・・”とアレサの一声、そして叫び、うめくように応えるホーン、唐突にうなるギター。

67年にこのA(3)がFENから流れてきた時の驚きといったらなかった。

この時がアレサとの最初の出会いというわけではなかったが、”レディ・ソウル、アレサ”との邂逅はこうしてなされたのである。

1年ほどたって手に入れたLPはグラモフォンから出されていた日本盤だったが、その時の印象はまた違っている。

当時、既にオーティスのヴァージョンで親しんでいたA(1)はそれほど熱くなれず、その曲がA(3)以上にアメリカの黒人にまさに敬意を払って受けとめられていたなどということは、当時のぼくには知る由もなかった。

A(3)、ブルージーなB(1)、すばらしいB(3)、そしていつもそこで足を止めたのがA(6)である。

繰り返し聞いた。

大好きだった。

むろん今も。

ぼくにとっては、「エイント・ノー・ウェイ」「マイ・ソング」と並ぶアレサの3大傑作の1曲である。

ここに、サザン・ソウルのすばらしさ、いや歌の深さというものをいかに感じたことか。

60年代最高の女性シンガー、そして60年代最高のアルバムの1枚、この確信は今も変わらない。

▶Some More from this Artist

この後、70年代までのアレサはすべてアトランティックからレコードを出しているので、まず列記してみよう。

  1. “Aretha Arrives”
  2. “Lady Soul”
  3. “Aretha Now”
  4. “Aretha In Paris”
  5. “Soul ’69”
  6. “Areta’s Gold”
  7. “This Girl’s In Love With You”
  8. “Spirit In The Dark”
  9. “Aretha’s Greatest Hits”
  10. “Live At Fillmore West”
  11. “Young, Gifted And Black”
  12. “Hey Now Hey (The Other Side Of The Sky)”
  13. “Amazing Grace”
  14. “Let Me In Your Life”
  15. “With Everything I Feel In Me”
  16. “You”
  17. “Sparkle”
  18. “The Best Of Aretha Franklin”
  19. “Sweet Passion”
  20. “Almighty Fire”
  21. “La Diva”

上記の他にも、ベスト盤が何枚か組まれているが、中ではこの時代の集大成ともいうべき4枚組『クイーン・オブ・ソウル』(AMCY-480~3)が重要作を多く集めていてファンには貴重なものとなっている。

10数年の作品を見渡して面白いことがわかる。

⑤⑫、さらに79年の㉑とジャズ寄りのアルバムを何年か置きに作っていることだ。

こうしたアルバムは、コロンビア時代の名残りとしてぼく自身忌避していたが、ここ10年くらいの間にコロンビア時代にも自然に目が向くようになり、それほどの違和感はなくなった。

その反対が⑬のずばりゴスペル2枚組で、アレサ自身心の揺れのバランスを取っていたのであろう。

72年にロスの教会で録音されたもので、バックの良さもあって実に重厚なアルバムである。

アレサが、ゴスペル界から嫌われることなく、むしろ尊敬されていることが実感できる。

ところで、67年のアトランティック入社以来、アレサは徐々にポップ化し、つまらなくなっていくと言われている。

だが、1枚1枚丹念に聞いていくと、それは必ずしも当たらない。

「エイント・ノー・ウェイ」を含む②が、デビュー盤と並ぶ名盤であることは認めても、①や③がそれほどいいアルバムかどうかは疑問だ。

⑦も「コール・ミー」、⑧も「ドント・プレイ・ザット・ソング」といった名作は含まれてはいるものの、⑬を聞いた後ではいかにも物足りない。

ニュー・ソウル運動に同調し、ダニー・ハザウェイやビリー・プレストンも参加している⑪も同様。

なお、2枚あるベスト物では、⑨の方に他のアルバムに収録されていない作品も含まれている。

74年以降の⑭以下にも自作曲を中心に必ず1,2曲はいい曲が入っている。

特にウエスト・コースト録音の⑯、カーティス・メイフィールドがプロデュースしたサントラ盤⑰、⑲あたりは見逃すべきではない。

転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志

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