THE SWEET INSPIRATIONS / What The World Needs Now Is Love
LP (Atlantic SD-8201)
Producer: Tom Dowd
スウィート・インスピレイションズは、シシー・ヒューストン、エステル・ブラウンをリードとした4人組の女性グループである。
もともとドリンカード・シンガーズ、ゴスペレアーズといった名門ゴスペル・グループの出身者たちの集まりなので、必然的にゴスペル色の濃い、ハーモニーのしっかりしたグループになっている。
また、デビュー前のセッション・グループとしての下積みも長く、まさに実力派という表現がピッタリのグループである。
このアルバムは、68年に発表された彼女たちの3枚めのアルバムで、プロデューサーはトム・ダウド。
他人のヒット曲が多いが、それを彼女たちが肉厚のコーラスで自分たちのものにしているところが聴きどころである。
実際A(2)のようにポップ曲なでも、これだけ聴けるものに仕上げてしまう彼女たちの実力には感心する。
有名なA(6)も、シシーの熱唱によって生まれ変わってしまっている。
リードは、高い張りのある声がシシー、低めのややハスキーな声がエステルである。
スローな曲が多いが、エステルがリードのA(2)、B(3)、シシーがリードのA(5)、B(1)など、どれもゴスペル風味タップリで、聴き応え十分だ。
ただ名曲B(5)はユニゾンで歌われていて、ちょっと変な感じだが。
ジャンプはA(4)、B(2)(4)とあるが、こちらもゴスペル仕込みの躍動感に溢れている。
なお録音場所は記されていないが、たぶん南部だろう。
▶Some More from this Artist
- “The Sweet Inspirations”
- “Songs Of Faith & Inspiration”
- “Sweets For My Sweet”
- “Sweet Sweet Soul”
- “Estelle, Myrna And Sylvia”
- “Hot Butterfly”
①は彼女たちの最初のアルバムで、67年の発売だ。
内容は充実しており、彼女たちの代表作の1枚と言える。
やはり南部録音で、その重厚なハーモニーを堪能できる。
②は68年のゴスペル・アルバムで、シシーが堂に入ったゴスペル・シンギングを披露している。
69年の③は4枚目のアルバムになるわけだが、引き続き南部録音で、基本路線は1枚め、3枚めと変わっていない。
やや濃度が下がった気もするが、悪くない。
④は70年のアルバムで、何とフィリーのシグマ録音である。
フィリー・サウンドとの相性はあまり良いとも思えず、不完全燃焼気味で不満が残る。
そしてこれを最後にシシーはソロ・シンガーとして独立してしまう。
73年の⑤はスタックスに移ってのアルバムで、再び南部録音に戻っている。
が、以前のようなアクが感じられず、個性が無くなってきている感じだ。
ずっと飛んで⑥は79年のアルバムだ。
ここではエステルも抜けてしまっていて、もう昔のグループの面影はあまりない。
年代から予想できるようにディスコ寄りのアルバムだが、そうした中ではしっかり出来ているほうだろう。
一方独立したシシーはジェイナス、プライヴィット・ストック、コロンビアに計5枚のアルバムを残している。
彼女の実力が十分に捉えられたものはないが、中でも気に入っているのが”Step Aside For A Lady” (Columbia 36193)。
なおシシーはホイットニー・ヒューストンの母である。
転載:U.S. Black Disk Guide©石黒恵
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