KOOL & THE GANG / Wild And Peaceful
LP (De-Lite 2013)
Producer: Kool & The Gang
まだストリート・ファンクなんていう言葉がなかった頃、”サウンド・オブ・ストリート”の代表格がこのクールとギャング達だった。
グループ名からして、”ストリート・ギャング”なんていう言葉を思い浮かべるしね。
最初支持を集めたのも、当時はまだ危険な匂いが一杯のディスコティックからで、余計荒々しい連中というイメージを抱いたものだ。
だが、アルバムを通して聞いてみると、意外とすましたジャズもどきの作品が結構あって面喰らったりする。
もっとも、今はそのメロウな感じのインスト(たとえば「サマー・マッドネス」)が受けていたりするそうだが、彼らのその後の歩みを考えると、そうした聞き方が正解なのかもしれない。
だが、このアルバムは、中では彼らのいうストリート感覚が一番直接的に出たものだった。
すべての人に、こうした趣向を押しつけるつもりはないが、ソウル/ファンク・ファンにとって一番聞き易いアルバムであることは確かだろう。
それは、ひとえにA(1)、A(3)、A(5)の73~74年の3連続ヒットにある。
これらの曲が、家に閉じこもりがちだった音楽ファンの足を外へと運ばせるきっかけになったのだった。
特に、A(1)はいつ聞いても名作ファンクというしかない。
実によく出来ていて、笛の音や掛け声までが生き生きと聞こえるほど。
その続編ともいうべきA(2)までが、文句ないところで、A(3)(5)はそれ以上の大ヒットになったにもかかわらず、既に行き詰ってしまったように聞こえてしまう。
例によって、フュージョンの先掛けのようなA(4)やB(3)もある。
▶Some More from this Artist
クール&ザ・ギャングは69年にグループ名と同じ曲でデビューし、またまた同じタイトルのLP(同 2003)を発表しているが、初期はほとんどインストである。
うまいとは思うのだが、それ以上の感想が出てこないのも事実で、デビュー・アルバムでは「レット・ザ・ミュージック・テイク・ユア・マインド」がファンク・ファンには案外面白いかもしれない。
以後、精力的にLPを出し続け、73年の上掲のアルバムで既に7枚目を数えるというからすごい。
この間の主だったアルバムを拾ってみると、”Music Is Message” (同 2011)、”Good Times” (同 2012)があるが、どうもまだ弱い感じがする。
また、ライヴ・アルバムも2種”Live At The Sex Machine” (同 2008)、”Live At P.J.’s” (同 2010)があり、前者などは演奏は荒いが結構楽しめる。
ところで、ロバート”クール”ベル、ロナルド・ベルの兄弟、ジョージ・ブラウンらジャズ好きの連中がニュー・ジャージーで集まって作られたバンドとよくいわれ続けてきたが、それは時代的な発言というもので、ロバートなどは、その前にボルティモアでサタデイとかブルー・ライツといった結構ソウルっぽいグループに関係していた男だ。
再びアルバム紹介に戻ると、75年に再度ナンバー・ワン・ヒット、「スピリット・オブ・ザ・ブギ」を出し、同名のLP(同 2016)も発表するが、ファンクとしては平均的である。
それだったら、イギリスでのライヴ盤”Love & Understanding” (同 2018)とか、タイトル曲がカッコいい77年の”Open Sesame” (同 6002)の方がいい。
特に前者はよく出来たライヴ盤だ。
79年彼らはイメージを一新する。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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