LP (Mercury SRM-1-1013)
Producer: Ohio Players
Pファンクほどではないにせよ、オハイオ・プレイヤーズも広範で複雑な人脈を持ち、それだけに大きな影響を及ぼしてきたバンドである。
88年に、文字通り主力メンバーが再結集した力作”Back”(Track 58810)を発表し、同時に来日もしてくれたので、もう少し何とかなるかと思ったが、それっきりというのも実に情けない。
アルバムとしては、まあ順当なところで75年の『ファイアー』を選んだが、その前後のアルバムはどれも良く、正直いって甲乙つけ難い。
改めて、74~76年の彼らはすごかったと痛感させられる。
その勢いはまずA(1)に現れる。
消防車のサイレンが始まりを告げ、”ファイアー”と掛声、おなじみのリズム・パターンが小気味良く続いていく。
シュガーフットの”ウー・ウー・ウー・ウーウ”という猥雑な歌声までがグサリと心に突きささってくるほどだ。
クール&ザ・ギャングで口火を切られたストリート・ファンクはこのナンバー・ワン・ヒット曲で頂点を極めたといっても過言でなないだろう。
思えば遠い道のりだった。
50年代末にデビューして以来10数年、そしてこの本当の魅力に気づくまでぼくらも回り道をしたものだ。
ファンクからバラードまで同じ精神で貫き通したオハイオの真髄がまさにこのアルバムにある。
A(3),B(1)(3)はそりゃあ名作A(1)には比べられないけど、相変わらず何ともイヤラシイ雰囲気を出しているし、大ヒットしたA(4)やA(2)は喩えようがないほど美しい。
ぼくはよりオーソドックスなバラードB(2)にむしろ強く惹かれるのだが。
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オハイオの全盛期がマーキュリー時代であることは衆目の一致するところではあるが、彼らはそれぞれの時代にそれぞれ興味深いキャリアを持ち、時に侮ることのできないほどレヴェルの高い業績を残した。
その前身がオハイオ・アンタッチャブルズといい、ファルコンズの「アイ・ファウンド・ア・ラヴ」のバックをやっていたというのは、もうかなり広く知れ渡っていると思うので詳しくは触れないが、その当時のリーダーだったロバート・ワードが何と20数年ぶりにカムバック、アルバムをつい最近、91年になって発表したことだけは触れておきたい。
67年にオハイオ・プレイヤーズと名を改めてのものとしては、コンパス/トリップ、キャピトルなどにLPがあるが、そのうち”Observation In Time” (Capitol 192) は、ファンクというよりオーティス・レディング・スタイルの好盤だ。
CDであれば、『モア・ファンキー・ソウル・パーティ』(キャニオン・インターナショナル D20Y-0253) がその当時の曲を10数曲集めたお得用盤だ。
ディープなダッチ・ロビンスンやシュガーフット(シュガー)の他、後にアンディスピューティッド・トゥルースに参加するジョー・ハリスの声も聞ける貴重なもの。
70年にダッチらに変わり、ジュニーことウォルター・モリスンが歌/キーボードで加わり、そのスタイルは一変する。
それがウエストバウンド時代で、ヒット曲は出るようになったが、今ひとつ支持できないようなスタイルだ。
アルバムは編集物も含め数多いが、主なものを挙げておくと、①”Pain” (Westbound 2015), ②”Pleasure” (同 2017), ③”Ecstasy” (同 2021), ④”Climax” (同 1003), ⑤”Greatest Hits” (同 1005) などがある。
女性の妖しげな姿態を表に出したジャケットがこの頃から始まる。
①にはシュガーの歌うブルースが入ってたりするが、ジュニー色が強まり、70年代ファンクに向かっての手探りが始まる。
72年の②からはウエストバウンド時代最大のヒット曲「ファンキー・ウォーム」が生まれているが、まだ試行錯誤の域は出ず。
むしろ、シュガーの歌ったバラードにいいのがあったりする。
③④も同じようなもの。
74年にマーキュリーに移籍、ドラムスにジェイムス・ウィリアムス、キーボードにビリー・ベックが加わり、新しいスタイルが完成。
これは、Pファンクにブーツィらが加わったことに対応する出来事といえるかもしれない。
なお独立後ジュニーはソロ・アルバムを発表、Pファンクにも参加する。
⑥”Skin Tight” (Mercury 705)
⑦”Honey” (同 1038)
⑧”Contradiction” (同 1088)
⑨”Angel” (同 3701)
⑩”Mr. Mean” (同 3707)
⑪”Jass-Ay-Lay-Dee” (同 3730)
78年までに7枚。
その他”Gold” (同 1122)というベスト盤があるが、2曲は他で聞けず。
⑥⑦が何といっても名盤だ。
⑦の「ラヴ・ローラーコースター」「フォップ」までは文句なし。
⑧にも76年の傑作「フード・シー・クー」があるが、⑨~⑪はさすがにパワーが落ちている。
この後、アリスタで1枚LPを出した後、ボードウォークで2枚、”Ouch!” (Boardwalk 33247) はシュガーの別の良さが出て悪くなかったが、彼がロジャーと組んだ85年の”Sugar Kiss” (WB 25168) の方が結構面白い。
ザップのオリジナル「アイ・ウィル・ビー・ユア・スター」も入ってるし。
シュガーがらみではないが、84年の”Graduation” (Air City 403) も案外といいLPだ。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
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