LP (Capitol ST-11461)
Producer: Beau Ray Fleming, Byron Byrd
オハイオのファンク界を語る時に、欠くことのできない大型ファンク・バンド、サン。
リーダーのバイロン・バードのあくが余りにも強いためか、彼を取り巻くメンバーがなかなかフィックスされず、84年にエア・シティ・レコードからリリースされたカム・バック・アルバムでは何とメンバーは2人のみになっていた。
そんな激しいメンバーの流動の中にありながらも、彼等が最も刺激的だったのがこのファースト・アルバムがリリースされた76年前後だろう。
後にデイトンを結成するショーン・サンドリッジ、クリス・ジョーンズ、ディーン・ハモンズの3人もリズム・セクションのコアとして踏ん張っていた頃だ。
よくオハイオ・プレイヤーズの弟分とかいった形容句がサンに対して使われるようだが、サンの方がより泥臭いサウンド作りを身上としており、それはオハイオ・プレイヤーズ75年の名作『ハニー』とこのアルバムを聴き比べてもらえれば容易に理解してもらえる筈だ。
その意味でも、改めてここでサンのアイデンティティを尊重する立場を取っておきたい。
閑話休題。
まずA(1)。
のっけからリズム・セクションとホーン・セクションが一丸となって突進する激重ファンクのお出まし。
ヴォーカルがユニゾン・コーラス主体なのは残念だが、あとは文句のつけ様がない。
ブリッジ・パートでのリズム・ギターとドラムスのアンサンブルは特に鋭い。
BPMを若干落として、比較的クリアにまとめたA(2)も実に熱い。
アルバム中最もダンサブルなA(4)はポップだが、悪くはない。
そして、ベスト・トラックとなるのがB(1)だ。
楽曲の完成度は言うに及ばず、ゲストに迎えられたロジャー&レスター・トラウトマンがサビの部分をヴォコーダーでクールにキメるという驚愕のプレミアムまでもが含まれているのだから、それも当然か。
ロジャー(ザップ)のサクセス・ストーリーは、ここでの成果から綴られ始めたと言っても過言ではなかろう。
一方、スローに対する姿勢も実直で、中でも丁寧なコーラスをバックにしっとりとした歌唱を披露したB(3)など聴き応えがある。
▶Some More from this Artist
- “Sunburn”
- “Sun Over The Universe”
- “Force Of Nature”
- “Let There Be Sun”
- “Eclipse”
彼等にとって最もサクセスフルだったアルバムが、78年リリースの①、9人編成になり、パワー・アップした新生サンの姿は、日本でもヒットを記録した「サン・イズ・ヒア」に顕著。
全然彼等らしくない軟弱な「ダンス」なんて曲も収録されているが、このような曲を演じるのは、3人の白人が新たに加わったことと無関係ではなさそう。
それ以降、サウンドのソフト化が進行するが、②(80年作)で従来の姿を取り戻し始め、③(81年作)④(82年作)ではその時代の音を吸収しながらも、”サン”らしさを前面にプッシュした内容になっている。
特に「オン・マイ・レディオ」他、秀作ファンクの詰まった③は必聴だろう。
カム・バック作⑤は「レッグス」以外、中級の仕上がり。
転載:U.S. Black Disk Guide©細田日出男
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