PARLIAMENT / Mothership Connection
LP (Casablanca NBLP-7022)
Producer: George Clinton
ロック的ダイナミクスの触発が黒さの新たな展開をもたらしたスライやジミ・ヘンの独創性を認識する一方で、R&Bの伝統J.Bの提示したファンクの志を継承し、そこにゲットーの現実に根差すコンセプトを盛り込むと共に過激なミックスチュア感覚で更なるグルーヴの効力を求めたパーラメント。
ファンクが、単に音としての意味合いを越えた、黒人達にとっては自らの存在を確認するキーワードとも言うべき機能を果たすに至った70年代。
黒人サークルの最深部にその基盤を置く彼らの表現は、優れた成果を納めることになる。
76年発表の本作は、通算4枚目。
これよりマザーシップやドクター・ファンケンシュタインが登場。
スペース・オペラ風ストーリーが繰り広げられるが、ここでは、独特のクールな視点やゴスペル的側面を窺わすそのコンセプトが強力な存在感を放つ。
同時に、粘っこくうねるブーツィのベース、空間を幾何学的に揺るがすB.ウォーレルのシンセ、乗りを重視した陰影豊かなコーラス・ワーク、JBズより新たに参加したメイシオ、F.ウエズリーのファンク臭い立つホーン等々が、秩序と混乱の中で絡み合う比類なきPファンク・サウンドも、このアルバムにて完成を見る。
アーシーな粘着性に乗ってクリントンがPファンク宣言を行うA(1)、J.B.で始まりゴスペルで終わるA(2)、R.デイヴィスの低音を活かした高揚感溢れるコーラスが素晴らしいB(3)と言った代表的名曲でも明らかなように、J.B.、スライ、ファンク、R&B、ゴスペル、ブルースの諸要素がディープなニュアンスと強靭なグルーヴの中で黒い輝きを発する。
永遠に色褪せることなき傑作ファンクである。
▶Some More from this Artist
- “Osmium”
- “Up For The Down Stroke”
- “Chocolate City”
- “Mothership Connection”
- “The Clones Of Dr. Funkenstein”
- “Live (P.Funk Earth Tour)”
- “Funkentelechy Vs. The Placebo Syndrome”
- “Motor Booty Affair”
- “GloryHallaStoopid (Pin The Tale On The Funky)”
- “Trombipulation”
66~69年、レヴィロットに6枚のシングル盤を残すが、67年に「テスティファイ」がR&Bチャート3位を記録するヒットとなるものの、デトロイトの二流ヴォーカル・グループの域は出ない。
70年前後のインヴィクタス録音をまとめた①は、スライ風ファンク、サイケ・ロック、デトロイト・ソウル、ゴスペルが混在。
後へのパワーのうごめきは認められるが、未だ形を成さず。
尚、CDは3曲多く収められている。
74年発表の②では、泥臭いヴォーカルと腰の強いリズムが一体となって圧するタイトル曲と「テスティファイ」の再録が、デトロイト色も残す強力ファンク。
しかし、アルバム全体としては、未だ個性の確立までには若干の猶予が必要。
続く75年発表の③では、抑制と高揚の対比が生む独特のクールネスに攻撃的メッセージを乗せたタイトル曲が秀逸だが、他にもJ.B.を踏まえたファンク、インプレッションズやゴスペルの消化による哀愁バラードまで、刺激性の強い作品が並ぶ。
75年でほぼベストのメンバーが揃い、④の成功へと結びつくが、⑤では更に成熟を加え、音楽的にも高い完成度を示す。
重いボトムと大胆な突出にゲットー直送のタフなイメージとやるせない屈折を秘めたストリート・ファンクが圧巻。
前作と同じく、リズム・アレンジをクリントン&ブーツィ、ホーン・アレンジをウォーレル&ウェズリーが担当する鉄壁の布陣。
限りなくルーズでタイトなグルーヴを従え、ドクター・ファンケンシュタインがファンクを説く。
④⑤をライヴの場で試みたのが、77年発表の⑥。
やはり脂の乗っていた頃だけに、どの曲もよりリアルな様相を呈す。
スリリングなプレイが衝突し合う「ドクター・ファンケンシュタイン」やグレン・ゴインズがゴスペル唱法で煽る「スウィング・ダウン・スウィート・チャリオット」の形容し難い熱気はライヴならでは、ソウル界屈指の強力ライヴ作だ。
⑦では幾分音的に整理が成されるが、その分いい意味でのポップなセンスが活かされ、R&Bチャート1位を記録した「フラッシュ・ライト」や、代表曲に数えられる「バップ・ガン」というキャッチーな名作ファンクが生まれている。
同じく大ヒットとなった「アクア・ブギー」をフィーチャーした⑧は、幾分抑え気味のグルーヴに乗った、多彩な表情を持つヴォーカルの妙とアイディアが秀逸。
⑨は、サウンドの毒気が薄れ、スケールの縮小も認められるものの、特有の陰影豊かな展開はまだ充分保たれている。
サウンドが新しくなった⑩は、ヘッド・ミュージック的側面とダンサブルなリズムとのバランスが魅力となる。
転載:U.S. Black Disk Guide©平野孝則
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