RUFUS THOMAS / Do The Funky Chicken
LP (Stax STS-2028)
Producer: Al Bell, Tom Nixon, Al Jackson
50年代からメンフィスで活動し、60~70年代にも数々のノヴェルティ・ダンス・ヒットを飛ばした、”世界一歳をとったティーン・ネイジャー”ルーファス・トーマス。
メンフィスのソウル・シーンでは、少々毛色の変わった存在だったことは確かだ。
1917年生まれと世代的にも古く、メディシン・ショウなども経験したトーマスは、自ら言う様に単なるシンガーではなく、アクター、ダンサー、コメディアンといった要素をあわせた、総合的なエンターテイナーと捉えるのが、一番わかり易い。
歌手としての体質は古く、70年代に次々とファンキーなダンス・ナンバーをヒットさせたが、それも古いブルースやノヴェルティ・ソングの感覚をメンフィス・ソウル/ファンキー・サウンドで蘇らせたものだった。
70年発表の本アルバムは、トーマスが70年代にノヴェルティなダンス・ヒットを飛ばすきっかけとなった、ヒット曲A(1)をフィーチャーしたもの。
ルイ・ジョーダンのA(2)やドミノズのA(3)も実にファンキーなアレンジ。
特に7分にも及ぶ後者は聴き物だ。
2パートに分かれたB(1)(2)も、ゴスペル仕立ての(1)、ダンス・テンポの(2)と趣向をこらしている。
全体に、理屈抜きで楽しめる1枚だ。
▶Some More from this Artist
トーマスは49年か50年にレコード・デビュー、51~53年にサンに録音。
中でも「ベア・キャット」はサン・レーベルの最初のヒット曲となった(先のA(5)はその再演)。
その時代の曲は『ウォーキン・ザ・ベア・キャット』(Pヴァイン PLP-322)でまとめて聴けるが、ストレートなブルースから、コミカルなダンスものまで、そのルーツがズバリとわかる。
63年のヒット「ザ・ドッグ」以降のアルバムを以下に。
- “Walkin’ The Dog”
- “May I Have The Ticket Please”
- “Doing The Push & Pull At PJ’S”
- “Did You Hear Me”
- “Crown Prince Of Dance”
63年の①は、カヴァー曲も多いダンス・アルバム。
スタックス初期ならば、スロー・ブルースも含むリイシュー”Jump Back” (Edsel 134 [英])が、本質を捉えた好LPだ。
③は70年のライヴ盤。
観客とのやりとりも見事で、エンターテイナーの本領発揮だ。
ダンス物からブルースまで。
④は各2パートずつからなる「プッシュ&プル」「ファンキー・ペンギン」「ブレイクダウン」といった、70年代初期のファンキーなダンス・ヒットがぎっしり。
73年の⑤は、④ほど派手にヒット曲が詰まってないが、好ブルージー・バラードもあり、充分楽しめる内容だ。
⑥”If There Were No Music”
⑦”I Ain’t Gettin’ Older, I’m Gettin’ Better”
⑧”That Woman Is Poison!”
⑥⑦は77,78年のディスコ全盛時のものだが、⑥ではメンフィス・ソウルの意地のようなものもみせた。
ブルースもしっかりやっている。
⑦はファンキーなダンス物で固めたが、10分以上のタイトル曲が圧巻。
60歳を過ぎての⑧(88年)も、まだまだ元気なところを見せているが、ブルースが多目になっていて、なかなかに味わい深い。
転載:U.S. Black Disk Guide©小出斉
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