LP (Mercury SRM-1-3844)
Producer: Allen A. Jones
ファンク・グループとしては現役中最古を誇る彼らの結成は65年のことで、67年の12月10日、メンバー6人中4人がオーティス・レディングと共に飛行機事故に遭い、他界してしまったというのは余りにも有名な話。
その後幸運にも同じ飛行機に乗らず、生き残ったジェイムス・アレクサンダーが中心になってバーケーズを再結成、現在に至るわけである。
60年代からブラック・ロック路線を突っ走り、70年代後半からはファンク・バンドとして不動の地位を築いてきた彼ら。
この2つのスタイルは、ブラック・ミュージックの歴史の中では同一線上にあるものの、現在の我々にとっては後者の方が今のブラック・ミュージックにより密接に結びついており、かつ親しみ易いという視点から80年のこのアルバムを選んだ。
さてその内容であるが、実はここからバーケイズは、彼らの80年代の重要な要素である、物真似ファンク・バンドとしての道を歩むことになる。
当アルバムで標的となったのはキャメオである。
ギターのカッティング、コーラス、ホーン・セクションと見事にキャメオの剃刀ファンクを再現している。
それにバーケイズ風味付けが加わり、物真似と分かっていても、これがたまらなくかっこ良いんだからどうしようもない。
「ブギー・ボディ・ランド」も右に同じ。
この後彼らはアルバム毎にリック・ジェイムス、オブライアン、ミッドナイト・スター、プリンスとパクっていく。
だからといって彼らのオリジナリティが消失してしまった訳ではない。
A(4)のゴツゴツした
キャタピラ・ファンク、これこそがバーケイズの独壇場たる世界なのだ。
このタイプの曲が前作『インジョイ』からの「ムーヴ・ユア・ブギー・ボディ」の流れとして、後の作品まで引き継がれていく。
またミディアムのA(2)、スローのB(2)(4)のようなソウル・グループ顔負けの作品に、彼らの長いキャリアとそれに対する自信を感じてしまう。
只ひたすら合掌。
▶Some More from this Artist
- “Soul Finger”
- “Gotta Groove”
- “Black Rock”
- “Do You See What I See?”
- “Cold Blooded”
- “Money Talks”
- “Too Hot To Stop”
- “Flying High On Your Love”
- “Light Of Life”
- “Injoy”
- “As One”
- “Nightcruising”
- “Propositions”
- “Dangerous”
- “Banging The Wall”
- “Contagious”
- “Animal”
①から⑤までの作品は、ブラック・ロックと呼ばれていた時代の作品。
この時代からは「ソウル・フィンガー」「ナックルヘッド」「サン・オブ・シャフト」「メンフィス・アット・サンライズ」といったヒットが生まれているが、インストが多いのが特徴。
78年の⑥と⑦は年代が前後するが、スタックス時代の未発表曲のアルバム化。
中では「ホーリー・ゴースト」が断突にかっこ良い。
76年の⑦はタイトル曲のファンクがまあまあだが、今一つ作品全体の完成度が低い。
78年の⑧になるとファンクがかなり良くなってきた。
しかし、それでもまだタイトル曲をはじめとする、ミディアムからスローにかけての作品に良いものが多い。
78年の⑨になってからようやく生きの良いファンクが聞ける。
そして79年の問題作⑩、何も言わず黙って「ムーヴ・ユア・ブギー・ボディ」を聞いてもらいたい。
これ、これですよ僕がバーケーズの全曲中1,2を争う程好きなのは。
他のファンクも良くて、ここにきて80年代バーケーズのオリジナルな部分の完成形に至った。
81年の⑪はリック・ジェイムスの物真似をやっているわけだけど、タイトル曲なんかオリジナル「ギヴ・イット・トゥ・ミー・ベイビー」よりかっこ良いかも。
「ヒット・アンド・ラン」は前述の「ムーヴ・ユア…」の流れをくむ曲で、これも文句無し。
82年の⑫はオブライアンの物真似で、タイトル曲を聞けば一目瞭然。
「シー・トークス・トゥ・ミー・ウイズ・ハー・ボディ」はこれまた「ムーヴ・ユア・・・」系の曲なんだけど、異常な程のかっこ良さ。
でもこれで驚いていたら駄目。
12インチ・ヴァージョン(Mercury 811-165)を聞いて腰を抜かしてもらいたい。
「ドゥ・イット」はミッドナイト・スターが最近のアルバムでパクっていたようだけど、それも⑬のお返しか。
で⑬はミッドナイト・スターの物真似。
「フリークショウ・オン・ザ・ダンス・フロアー」は大ヒットしたが、これもオリジナルを越えているかも。
⑭はプリンスの真似だけど、あんな個性的な人は真似られるものではない。
⑮はプロデューサー、アレン・ジョーンズの遺作となる。
合掌。
メンバーも4人になってしまったが、前作の失敗を何とか盛り返している。
⑯はタイトル曲をはじめとしてかなりの水準。
転載:U.S. Black Disk Guide©伊藤嘉高
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