NEW BIRTH / Behold The Mighty Army
LP (Warner Bros. BS-3071)
Producer: Frank Wilson

ニュー・バースはハーヴィ・フークアが作り上げたヴォーカル&インスト・グループだとすれば、このアルバムを選ぶのは問題かもしれない。
というのは、これは彼らがハーヴィの手を離れて作られたアルバムだからだ。
だが、そうではあっても、ここにはハーヴィから受けたアイディアや音楽に対する取り組み方が見事に生かされ、すばらしい成果となって現れたと考えてよい。
ハーヴィに代わって77年のこのアルバムを手掛けているのはフランク・ウィルソン。
モータウン他ウエスト・コーストではいろいろなところで腕を振るっているが、これが彼の作り上げた最高傑作ではないか。
とはいえ、このアルバムの魅力が稀有の名シンガー、レズリー・ウィルソンによるところが大きいことは認めなければならないだろう。
別にここで初めてリードを取ったわけでもないのだが、一気にその魅力が全開した。
特に、最高にカッコいいファンク・ナンバーのA(1)から一転してスローのA(2)につなげるあたりは、この手のバンドの中では最高の場面のひとつといってもいい気がする。
オーソドックスなミディアムB(1)、再びスローのB(2)も大好きな曲。
B(3)の歌い方もうなるしかないね。
とにかく、駄作1曲もなしの真の名盤である。
▶Some More from This Artist
先に触れたように、このグループはハーヴィ抜きに語ることはできない。
いうまでもなく、R&Bグループ、ムーングロウズのリード・シンガーの1人だった男だ。
その彼はマーヴィン・ゲイの出発点で大きな影響を与え、また彼の最期にも精神的な支えにもなったことはよく知られているが、70年前後にこれからのソウルはファンク/ヴォーカル&インスト・グループが重要な役割を担うことを見抜いていた。
この鋭さはマーヴィンに通ずるところかもしれない。
そのハーヴィはRCAで仕事をし、ボビー・ナイト&ザ・ソウルサイエティとナイト・ライターズをまず手掛ける。
ルイヴィル出身の後者がニュー・バースの前身となるわけだが、彼らは並行して主にインスト・アルバムを何枚かRCAに残している。
初代のリードはボビー・ダウンズ、ロンディ・ローレンあたりだが、71年くらいからラヴ、ピース&ハピネスのアン・ボーガン、ウィルソン兄弟らが加わり、バンドは一層大所帯となる。
ではRCAのアルバムから見ていこう。
- 1.”The New Birth”
- 2.”Ain’t No Big Thing, But It’s Growing”
- 3.”Coming Together”
- 4.”Birth Day”
- 5.”It’s Been A Long Time”
- 6.”Comin’ From All Ends”
この他にベスト物に近いLPが3枚出ているが、以上の6枚をチェックするだけで十分だろう。
70、71年の①②はご多分に洩れず、この時代のゴッタ煮的要素が強く、正直いってまだ練られてないが、②には「オー・ワット・ア・フィーリング」なんていういかした曲も含まれている。
③からはウィルソン兄弟もかなり頑張り始める。
ピケットの「ドント・ノック・マイ・ラヴ」の最後の方のメルヴィン・ウィルソンの歌い方などほとんどゴスペルだ。
それは、④の「アイ・キャント・アンダスタンド・イット」の歌で結実する。
これはボビー・ウーマック/ヴァレンティノスの曲だが、彼らの初期(73年)の最大のヒット曲。
続く73年の⑤からもタイトル曲の大ヒットが生まれているが、この頃からレズリーをフィーチャーしたスロー・ナンバーが彼らの売物のひとつとなった。
この⑤では「ワイルド・フラワー」も人気の高い曲だ。
同時にメッセージ性というのも彼らの売物となり、74年の⑥では彼らのルーツ、アフリカがテーマとなる。
だが、音楽的レヴェルはあまり高くない。
これを最後にRCAを去り、様々なレーベルを転々とするわけだが、以後のLPをまとめておこう。
- 7.”Blind Baby”
- 8.”Love Potion”
- 9.”Platinum City”
- 10.”I’m Back”
- 75年のブッダ移籍をきっかけにハーヴィは降り、メンバーのひとりジェイムス・ベイカーが主導権を握っていくことになる。
- ⑦も相変わらずメッセージ物、いわゆるコンセプト・アルバムだが、先の⑥よりはいくらかまとまりが出てきた。
- だが、この中の唯一のナンバー・ワン・ヒット「ドリーム・マーチャント」がまたしてもスロー・バラードとは、彼らはほとんどファンク・バンドと見られていなかったのか。
- 「ブライド・マン」など迫力十分なのだが。
- 76年にワーナーに入ってからは前述のアルバムのほかに1枚目の⑧があるが、これもすばらしい。
- レズリーがリードの「フォーリン・イン・ラヴ」、メルヴィンが久しぶりにリードを取る「ウィ・アー・オール・ゴッズ・チルドレン」などオーソドックスなナンバーがいいが、ファンクも悪くない。
- ところが、79年の⑨では既にウィルソン兄弟は抜け、ロバート・ダウンズやアレン・フレイが頑張ってはいるが、迫力不足。
- なお、レズリーはこの後L.T.D.に参加しているのは有名。
- 82年の文字通りのカムバック盤⑩は、音も新しくなり、歌も頑張っていて傑作といっていい内容。
転載:U.S. Black Disk Guide©鈴木啓志
コメント